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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

経済危機が2009年中に終息するとは到底考えられない明確な理由

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第4回】 2009年1月6日
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 2008年の秋以降、日本経済はきわめて深刻な経済危機に直面しつつある。つぎつぎに明らかになる経済指標の落ち込みがあまりに激しく、これまで経験したことのない異常な値であるため、これから何が起こるのかがまったくわからないという不安に、多くの人が襲われている。

 以下では、この経済危機の規模と、それが終息するまでの期間について、定量的な評価を試みることとしよう。

 この目的のためにしばしば用いられるのは、アメリカの住宅価格データである。すなわち、住宅価格におけるバブルが今回の金融危機の基本的な原因であるとの認識から、「それが正常と考えられるレベルに下落するまで調整が続く」とする考えだ。

 この基本的なロジックは正しい。ただし、それを現実的な判断材料に用いるにはいくつかの問題がある。最も重要なのは、「いかなる価格が正常なレベルか」に関するものだ。「今回の価格上昇が始まる以前の水準が正常なレベル」と考えるにしても、2001年頃の値を取るか03年頃を取るかで、かなりの差がある。さらに、住宅価格は金利水準に影響されるが、この数年間のアメリカの金利はかなり変化しているので、それを考慮に入れる必要がある(金利が低ければ、「正常」な住宅価格は高くなる。このこと自体はバブルではなく、正常な経済関係である)。

 経済危機の規模と調整期間の問題を考える際にもう1つの重要な目安となるのは、アメリカの国際収支における経常収支の赤字だ。これは、価格変数ではないので、比較的扱いやすい。また、日本の立場から問題を考える場合には、貿易量の変化が重要なファクターとなるので、住宅価格よりは直接的な関連が深い変数となる。

 経常収支赤字が重要である理由は、それが今回の経済危機の基本的な原因になっているからだ。すなわち、アメリカ国内の住宅価格の高騰を背景として消費が異常な伸びを示し、それが輸入の増加を招いて経常収支の赤字が招来された。黒字国からアメリカへの資本流入によってこの赤字はファイナンスされてきたのだが、赤字額があまりに巨額になったためにドルに対する信頼がゆらぎ、それが金融危機を発生させた。したがって、赤字が持続可能なレベルまで縮小しないかぎり、経済危機は終息しないと考えられる。

 なお、経常収支は貿易収支と所得収支および経常移転の和である。ただし、アメリカの場合には所得収支は貿易収支の10~15%程度とあまり大きくなく、また所得収支と経常移転がほぼ相殺するので、経常収支と貿易収支を同一視しても、あまり大きな間違いにはならない。

経常赤字を3000億~4000億ドル程度は
縮小する必要がある

 では、経常収支赤字の数字から、危機の規模と期間をどのように推定することができるだろうか?

 第1に、危機の規模について考えよう。2006年におけるアメリカ経常収支の赤字は7881億ドルであり、GDPのほぼ6%に相当する巨額なものであった。このように巨額の赤字を長期にわたって持続することが困難であるとは、多くの人が認めるところだ。巨額の赤字が残っている以上、問題を引き起こした基本的要因が取り除かれたとは言えない。

 では、どの程度まで縮小すれば持続可能になったと言えるだろうか?

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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