ニューヨーク・タイムズ紙のサイトは
かくして中国当局にブロックされた

「私たちのウェブサイトが中国国内でアクセス不能となってからしばらく経ちました。もうすぐ行われる米中非公式会談の場で、オバマ大統領から習近平国家主席に直接働きかけてもらえるよう、我が社としてもホワイトハウスにロビイングをかけました。どこまで効果が出るかは、ふたを開けてみないとわかりません」

 2013年6月、米ニューヨーク・タイムズの関係者が私にこう証言した。同年同月、米国のバラク・オバマ大統領は就任して間もない中国の習近平国家主席をカリフォルニア州にあるサニーランドへと招待し、非公式に会談を行った。その後、私自身サニーランドを訪れてみたが、当時の約8時間にわたって行われたオバマ・習会談の模様が施設の随所で紹介されていた。同施設の関係者によれば、「中国からの観光客が日増しに増えている。ツアーも組まれている」とのことであった。

 冒頭の証言は、2012年10月、すなわち習近平が総書記に就任することが決まった共産党第十八回大会が北京で開催される直前、米ニューヨーク・タイムズのウェブサイト(英語版・中国語版含む)が中国国内でアクセス不能に陥った事件を指す。

 政治的立場を異にする中国当局が、ブロックしたのだ。

 中国当局を憤慨させたのが、温家宝首相(当時)家族の腐敗を暴いた記事だ(By DAVID BARBOZA : Billions in Hidden Riches for Family of Chinese Leader, October 26, 2012)。同関係者はこう指摘する。

「もちろん、以前から中国当局は我が社の報道スタイルに不満を持っていた。いつでも我々のサイトをブロックアウトする用意はできていたと思う。デーヴィッドのスクープは引き金に過ぎない。そもそも、こうなるのは時間の問題だったのかもしれない。それに、我が社には中国外交部から報道ビザを発行してもらえない記者もいる」

 奇しくも、米ニューヨーク・タイムズの中国支局は、同社の中国報道を監視し、ビザ発行を堰き止めている中国外交部の隣に位置する(北京市朝陽門)。同社の支局長が中国外交部報道局に対してアクセス不可を解除してもらうようロビイングをかけても、ほとんど効果がなかったというが、それでもオバマ大統領が直接習主席に働きかければ、状況は一変するかもしれない。