世間でも注目を集める「データアナリティクス」や「ビッグデータ」という概念が、人事の仕事のあり方を変えつつある。――多くの企業が、顧客の志向性分析や、営業マンの行動分析、マーケティングの費用対効果分析、さらには不正防止予測など、営業・マーケティング・リスクマネジメントなど、事業を取り巻くさまざまな領域でのビッグデータの活用を進めているが、こうした動きは人事の領域においても例外ではない。
先進的な企業では、ハイパフォーマーの特徴を調べるに当たり、通常の人事情報のみならず、社内のメールデータや、フェイスブックやリンクトインなどソーシャルメディアのデータまでを分析の対象として、採用時の候補者の選考基準や、配置計画の判断基準に組み入れるなど、人材マネジメント上のさまざまな場面で活用を進めている。
これまで意思決定の際に「カンや経験」に頼りがちであった、「ヒト」という定性的な領域に、データを活用した定量的な判断基準や予測モデルを組み入れる動きが広がり始めていることは、人事部門にとって1つの大きな変化であると言える。
こうした動きは先進的な外資系のIT企業などで特に顕著であり、その最たる例として挙げられるのが、インターネットサービスにおいて世界的なブランドとなっているグーグルであろう。
グーグルでは、評価や採用などに関するさまざまな人事オペレーションに統計的な解析手法を持ち込むべく、人事部門の約3分の1に数学者もしくは統計学を専門とするスペシャリストを配置するなど、人事のデータ活用に対する動きは他社と一線を画すものがある。
では、振り返ってみて日系企業の現状はどうであろうか。
日系企業の人材データ活用は
世界的に見ても後れを取っている
PwCが2012年に実施した「世界CEO意識調査(全世界のCEO約1300名を対象に行った調査)」によれば、「経営判断における人材データ活用の重要性」について肯定的な回答を示した割合は80%にも及んでおり、人事部門が提示する分析結果に対する経営層からの高い関心が数年前から示されていたことがうかがえる結果となっている。
こうした経営からの期待に対して、人事部門は現状として応えきれているであろうか。その対応状況は国別に見ると大きく異なり、とりわけ日系企業における人事データ活用の遅れが顕著に表れる結果となっている。