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データサイエンティストの冒険

本格的なIoT時代の到来を前に、
日本企業の奮起に期待したい

工藤卓哉 [アクセンチュア]
【第15回】 2015年3月10日
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インターネットが消えたあとには
何が残るか

 「インターネットは近い将来、事実上姿を消す」

 これは今年1月、「世界経済フォーラム」年次総会(ダボス会議)でのエリック・シュミットグーグル会長の発言です。ネットニュースでも大きく取り上げられていたので、ご存知の方も多いでしょう。

 彼の言葉が示唆しているのは、無論、インターネットの限界などではありません。生活の中に溶け込んで「姿を消した」機器やセンサ同士が連携し、高度にパーソナライズされたサービスを提供する世界の到来、つまり本格的なIoT(Internet of Things/モノのインターネット)時代がやってくることを示唆したものです。

 実はアクセンチュアが、同じダボス会議で彼の発言の裏付けとなる調査結果(「IIoTによる成功(Winning with the Industrial Internet of Things)」)を公開していたので、その一部をご紹介しましょう。

 同調査では、2030年までにIIoT(Industrial Internet of Things/産業向けのモノのインターネット)は世界で14兆2000億USドルもの巨大市場になる可能性が指摘されています。

 なかでも市場の牽引役と目される米国の成長は著しく、2030年までのGDP累積値は6兆1000億USドルに達し、IIoT関連の技術投資をさらに50%上乗せすれば、7兆1000億USドルにまで伸びる見込みだといいます。これは2030年のGDP予測を2.3%押し上げるほどの巨大な数字です。

 また日本におけるIIoT市場規模は、2030年までのGDP累積値で9600億USドル。上記同様の50%の追加投資で1兆1000億USドルの大台に手が届く見込みで、2030年の日本のGDP予測を1.8%増加させるという予測がなされています。

 とはいえ、どうしてIIoTがこれほどの大きな経済効果を生むのか疑問に思う方も多いことでしょう。その理由は、過去の「デジタル革命」とは異なり、その影響が及ぶ範囲が省力化や効率化といった領域にとどまらないためです。

 たとえば、IIoTが本格的に普及すれば、家庭やオフィス、屋外の各所に配置された機器と、私たちが身に付けているデバイスや各種センサが連携することで、帰宅時間を察知し無駄なエネルギーを消費することなく常に好みの室温を保ち続けたり、遠隔地に住む家族の健康や安全を見守り、何か異常を検知すれば通報してくれたりするようなサービスが、より安価に手軽に実現できるかもしれないからなのです。

グーグルやアップルが
保険料の決定に影響を与える?

 しかし、こうした世界を実現するためにはまだ多くの課題を乗り越える必要があるのも確かです。前述の調査に参加した世界の1400人以上の経営幹部の回答によると、57%が「IIoTの魅力は新たな収益機会の創出である」と述べているにも関わらず、「IIoTを活用して実際に収益を上げる見込みがある」と回答した経営幹部はたったの13%。73%の企業はIIoTを活用する具体的な計画を作成しておらず、包括的な投資戦略を持つ企業は7%に過ぎませんでした。つまりその可能性への展望に対して投資が追いついていない状況なのです。

 しかし、こうした大部分の企業と対照的なのが、グーグルやアップルのようにデータの利活用に貪欲な大企業です。これまでも彼らはさまざまな事業に挑戦していますが、IIoTにおいても例外はありません。いち早くこの分野から経済的な潜在力を引き出すべく行動を起こしています。

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工藤卓哉[アクセンチュア]

Accenture Data Science Center of Excellence 北米地域統括 兼
アクセンチュア アナリティクス日本統括 マネジング・ディレクター
慶應義塾大学を卒業しアクセンチュアに入社。コンサルタントとして活躍後、コロンビア大学国際公共政策大学院で学ぶため退職。同大学院で修士号を取得後、ブルームバーグ市長政権下のニューヨーク市で統計ディレクター職を歴任。在任中、カーネギーメロン工科大学情報技術科学大学院で修士号の取得も果たす。2011年にアクセンチュアに復職。 2016年4月より現職。 データサイエンスに関する数多くの著書、寄稿の執筆、講演活動を実施。


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近年、テクノロジーと数理モデルによってもたらされるアナリティクスが、ビジネスを大きく変えようとしている。データの高度な活用から次の打ち手を見出す力、アナリティクスの決定的な優位性を最前線から解説する。

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