ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
森信茂樹の目覚めよ!納税者

格差拡大を許す日本の税制に見える課題(2)

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第89回】 2015年3月12日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

再分配前所得は格差が大きい日本
高所得者の実態と税負担の問題

 「格差拡大を許す日本の税制に見える課題」について、前回は以下の点を述べた。

 わが国の格差は、所得再分配前所得については拡大してきた(再分配後は安定している)が、その理由は高齢化の進展と非正規雇用者の増加である。

 世代間で見ると、高齢になればなるほど格差が拡大し、30代、40代の格差は拡大している。賦課方式で逆進的な社会保険料負担、甘い年金税制など、税と社会保障による所得再分配機能は十分とは言えない。

 世界で比較すると、わが国は再分配前は格差の少ない国だが、再分配後は格差が大きい国となっており、所得再分配機能の再構築は重要な政策課題だ。

 今回は、トマ・ピケティ氏の議論を念頭に置きつつ、わが国の高所得者の実態を見ながら税負担の問題を考えてみよう。

 ピケティ氏は、米国では上位1%の高所得者が全所得の20%を占め、その割合がますます拡大しているという事実を、統計を使って見せてくれた。

 経済成長率(g)より資本収益率(r)が高いので、資本を持つ者はさらに資本が蓄積していく。この不平等は、世襲を通じて拡大するので、それを是正するには、世界規模での資産への課税強化、具体的には純資産への累進課税 が必要という。

 一方わが国では、図表1に見るように、トップ1%への所得の集中度合いは、米国とくらべて大層低い。先進諸国で最も安定しているとも言える。

 筆者は、米国(や英国、カナダ)の所得が集中している原因は、米国(アングロサクソン)のグリード資本主義、コーポレートガバナンスに問題があると考えている。わが国のようなステークホルダー資本主義のもとでは、ストックオプションなどで巨額の所得を得るCEOが多く出現するとは考えられず、簡単には米国型の所得分布にはならないだろう。

 では、わが国の高所得者・富裕層の実態はどうなのか。入手可能なデータで見ると、わが国の富裕層の姿がおぼろげながら見えてくる。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

⇒バックナンバー一覧