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鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

ピケティの言う
「教育で格差は縮まらない」は本当か

鈴木寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]
【第25回】 2015年2月19日
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 こんにちは鈴木寛です。

 まずはご報告から。すでに各所で報道されておりますが、この度、内閣から文部科学大臣補佐官を拝命いたしました。皆様からのご期待をかみしめております。大学入試改革を始め、日本の教育が真の21世紀型に生まれ変わるため全力を尽くす所存です。

 大学のクロスアポイントメント(兼任教授)、日本サッカー協会の理事は継続します。そういう意味では一人四役。政治家時代よりもスケジュールがひっ迫して執筆時間の確保に悩みますが、ダイヤモンド・オンラインの連載は多くの方にお読みいただき、教育関係者を始め、私の行く先々で感想をいただいて大変励みになっています。引き続き、よろしくお願いします。

大衆の心をとらえたピケティ
再び高まる格差拡大への不満

必死に学ぶ子どもたち。より良い人生を与えたいが…
Photo:milatas-Fotolia.com

 さて、年末から忙殺される中でもなんとか時間をやりくりして読み切った本があります。

 フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」。本国フランスではそれほどのブームではありませんでしたが、ご承知の通り、アメリカでは50万部を超える超ベストセラーとなり、さる12月に日本語版が出ました。

 アメリカで売れた背景としては、スーパー経営者の出現で上位1%の階層が総所得の2割、上位10%で半分を占める「理不尽」な格差に対し、問題意識を持つ人が多かったとみられています。しかも、「r>g」(資本収益率>経済成長率)の不等式に問題を集約させ、資本家と労働者の格差が広がっているとの主張はシンプルでわかりやすい。

 皆が漠然と感じていた資本主義システムの矛盾、すなわち労働者が汗水を流して稼ぐ所得よりも、お金持ちが資産を元手に増やす収益の方が大きく、稼ぐ労苦も大してかけていない――と思っていたことをピタリと言い当てたと感じたのでしょう。

 「ピケティ氏のマーケティングがうまい」といった批判的な声もありますが、これだけ大衆の心をとらえたのは、約200年分の膨大な各国税務データを分析し、格差への問題を提起したピケティ氏自身の真摯な努力があったからだと思います。

 日本でも、すでに十数万部の売れ行きを見せ、日本の専門家による入門書の中には10万部に届く勢いの本も出ています。先日はピケティ氏が問題にする格差が国会でも取り上げられ、それがまた新聞記事となるなど高い関心を集めています。6000円近くと高価にして幅4cmの分厚い本がこれほどのベストセラーになるのは記憶にありません。米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授のような一大ブームになっています。1月下旬にはピケティ氏本人が来日し、講演やマスコミ各社のインタビューに応じていました。

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鈴木 寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]

すずき・かん/元文部科学副大臣、参議院議員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、86年通産省入省。2001年参議院議員初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会幹事などを歴任。13年7月の参院選で落選。同年11月、民主党離党。14年から国立・私立大の正規教員を兼任するクロス・アポイントメント第1号として東京大学、慶応義塾大学の教授に就任。同年、日本サッカー協会理事。15年2月から文部科学大臣補佐官として大学入試改革などを担当している。


鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

インテリジェンスとは「国家安全保障にとって重要な、ある種のインフォメーションから、要求、収集、分析というプロセスを経て生産され、政策決定者に提供されるプロダクト」と定義されています。いまの日本社会を漫然と過ごしていると、マスメディアから流される情報の濁流に流されていってしまいます。本連載では既存のマスメディアが流す論点とは違う、鈴木寛氏独自の視点で考察された情報をお届けします。

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