米国産業界で強まる
ドル高是正の圧力

 米国政府が為替政策を考える上で、最も重要なファクターは国内経済の動きだ。経済が堅調であれば、政府としても為替の動きにそれほど神経を尖らせる必要はない。

 しかし、経済の先行きに不透明感が出たり、企業業績に伸び悩みの兆候が見えだすと、そろそろ為替政策に変化が出始める。特に政府が神経を使うのは、企業経営者の発言や業界団体からの要請、さらには政治家の世論形成の動きだ。

 ドルは昨年1年間で、円やユーロなど主要通貨のバスケットに対して約13%上昇した。昨年の米国貿易赤字は約7300億ドルと約5%拡大した。赤字拡大の背景には、ドルが大きく上昇していることがあるとの見方が有力になりつつある。 

 特に、中国や韓国、さらには欧州諸国との貿易は過去最大の赤字を記録した。そうした状況に対して一部の下院議員から、「他国が自国通貨を切り下げることで、ドルが上昇しているは不公平」との発言も出ている。

 一方、産業界からもドル高に対する懸念が表明される頻度が高まりつつある。米国には輸出比率が高い企業も多い。また、海外展開が進んだ企業にとってドル高が進行することは、海外で上げた収益のドルベースの手取り額が減少することになる。

 株式市場でも、ドル高による企業業績の伸び悩みを懸念する声が高まっており、足元のニューヨーク株式市場でドル独歩高が鮮明化すると、米国主要企業の株価がさえない動きを示すことが多くなっている。

 問題は、政府やFRBが自国経済の動向を睨みながら、どこまでドル強含みを容認するかだ。足元の堅調な経済展開を見ると、短期的に米国の政策当局がドル高の是正に動くとは考えにくい。

 しかし、このままドル高を何年も容認するとも考えにくい。恐らく、来年にかけて、米国のGDPが伸び悩み、株式市場でもドル高懸念の声が高まってくるようだと、政府やFRBがドル高に対する懸念表明を行うと見る。

 そのタイミングに呼応して、ヘッジファンドなど大手投資家は積み上げたドル買い持ち=ドル・ロングの利益確定に動くことが想定される。為替市場の動きは少しずつ変化する可能性がある。