中国経済の減速がきつくなっているという報道が相次いでいる。注意が必要なのは、地域や業種によって様相はかなり異なっているという点である。北京や上海では景気減速は感じにくい。

悲観と楽観のはざまに揺れる<br />“期待”の制御に苦心する中国全国人民代表大会に出席した習近平国家主席(左)と李克強首相(右)
Photo:AP/アフロ

 先日、上海の金融街にある超高層ビルの地下レストラン街へランチタイムに行ってみたが、このビルで働く人々で以前にも増して大混雑になっていた。

 価格帯は決して安くはない。洋食のチェーン店にかろうじて席を見つけたので入ってみた。ランチセットは60元(1170円)、ハンバーガーで88元(1710円)だ。今や東京のオフィス街より高いが、金融関係者の所得は円換算で年収1000万円も珍しくなく、2000万円でも驚かれない状況になってきた。この程度の支出は気にならない人が増えている。

 住宅価格も、経済や社会に大きな影響を持つ第1線級都市では下げ止まりが見られる。住宅購入を様子見してきた上海の証券マンは、「中国人民銀行の金融緩和で資金が不動産市場に流れてきそうだし、一人っ子政策の緩和で住宅の買い替え需要が出てきそうなので、そろそろ買おうかと考えている」と話していた。

 とはいえ、住宅価格は所得比で見て手が届かない“成層圏”にある。ここからの回復は「底が長いU字形」になるのではないか、という観測が数カ所で聞かれた。

 他方、鉄鋼など過剰設備業界が多い地域や、地方政府が傘下に置く投資会社、融資平台(投資プラットフォーム)が身の丈を超えた借金を膨らませた地域では、中央政府が整理を進めようとしているため、資金繰りの悪化や企業倒産が起きている。