あぶら見聞録
【第3回】 2015年3月31日 森枝卓士[写真家/ジャーナリスト]

「鶏の脂」はどう料理すべきか

今回取材に行った「バードランド」主人の和田利弘さん。「バードランド」は銀座のビルの地下にあるが、ただの地下ではない。あのミュシュラン三つ星の寿司屋と、鰻と言えば、の名店。それらと並んで店を構えている。これだけで、どのような店か、わかるはず?

鶏肉を美味しくする法
まずは森枝流から

 アブラ、つまり脂と油をキーワードに、「美味しい」や「食」を考えるこの連載。これから、具体的に様々なアブラを見て回りたいと思う。とりあえずは美味しいアブラのあるところから、アブラを見て、食べて、考えたい。

 先ずは鶏。鶏といえば、いつも我が家で大パーティをやるときに、一番活躍してくれる食材である。何より安い。腿一本、百円くらい珍しくない。そして、他の肉以上に「安いものをそれなりに」してしまうことが簡単だからだ。

 さて、ピチットシートをご存じだろうか。食品用脱水シートだ。メーカーのホームページ(http://www.pichit.info/)には、以下のような説明がある。

<目に見えない穴の開いた2枚の特殊な食品用半透膜フィルムと、その間にはさまれた高い浸透圧を持つ食品の水あめ成分、吸収した水分を保持する海草成分(糊料)の働きによる"浸透圧パワー"。この"浸透圧"が、「ピチット」に包まれた魚介類や肉類などに含まれる余分な水分や、水よりも分子が小さいアンモニアやトリメチルアミンなどの生臭み成分は取り除き、分子が大きい旨み成分は素材の中に閉じ込め、ギュッ!と凝縮させるのです>  

 要するに、肉をこれに包んで冷蔵庫に入れておいたら、余分な水分が抜けるのだ。二、三日もしたら、特売のブロイラー肉が、まるで地鶏の肉のようにむちっとした食感に変わるのだ。なので、大勢の客があるときは、これを仕込んでおけば、「なんちゃって地鶏」の大盤振る舞いが少ない予算で出来る、というわけなのである。

ピチットシートに包んだばかりの肉と、一日おいたもの。その違いが分かってもらえるだろうか。数日おいたらちょっとした干物状態の凝縮度になる

  ところで、これは本当に手抜きながらも、自慢の知恵なのだけど、一つだけ、悩みというか不満がある。肉はそれなりに誤魔化せるようになるのだけど、皮はそうはいかないことだ。で、たいてい、皮を剥いでから調理する。ヘルシー料理とかいって……。

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1955年、熊本県水俣生まれ。写真家、ジャーナリスト。

水俣病の取材に訪れたユージン・スミスと出会い、フォト・ジャーナリストを志す。国際基督教大学で文化人類学を学んだ後、東南アジアを手始めに世界各地に出向き、取材・撮影・執筆活動を行う。大正大学客員教授など様々な大学で食文化を講義。漫画『華麗なる食卓』の監修も務めた。著書に、『カレーライスと日本人』『食は東南アジアにあり』『考える胃袋~食文化探検紀行』(石毛直道との共著)『食べもの記』『味覚の探究~美味しいってなんだろう』『食べているのは生きものだ』など「食」に関する著作多数。


あぶら見聞録

20年ほど前に著した『味覚の探求』で、「人間にとって味覚とは何か? 美味しいとはどういう意味か?」という根本的な問題に正面から取り組んだ著者が、いま改めて、あぶら(油・脂)の持つ旨さとは何かを検証する、「味覚の探究」の新シリーズ、開幕! 

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