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ニッポン 食の遺餐探訪

安い輸入品の味に慣れてしまった人に伝えたい
本当に美味しい「日本の鶏肉」の凄さ

樋口直哉 [小説家・料理人]
【第21回】 2014年8月6日
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宮崎県高鍋町で黒岩正志さんが育てている『黒岩土鶏』の炭火焼き

 中国の食肉加工会社「上海福喜食品」が賞味期限切れの鶏肉を使用していた問題を受けて、中国産の食品をとりまく状況について様々な意見が連日、飛び交っている。

 どれを読んでも「まあ、そうなんだろうなぁ」という感じだと思うが、今回は翻って日本の鶏肉をとりまく状況についてはじめに触れておきたい。今回のテーマが『日本の鶏』だからだ。

日本の鶏肉輸入量は毎年80万トン!
鶏もも肉が大好きな日本人

 財団法人日本食肉消費総合センターが出している「鶏肉の実力~健康な生活を支える鶏肉の栄養と安全安心~」という冊子によると、日本の鶏肉をめぐる状況には大きく2つの特徴があるそうだ。

(1)まずこれだけの量の鶏肉を輸入している国はないということ

 今回の事件が起きるまで、コンビニエンストアで売られているフライドチキンの原材料が中国産だと知らなかった人も多いのではないだろうか。

 日本はとりわけ鶏肉の輸入量が多い国だ。約80万トンの鶏肉を毎年、輸入している。約5億人の人口がいるEU全体での輸入量は90万トンというから、やや多すぎる気もするけれど、我々に実感はない。

 その理由は日常的に目に見える形で輸入鶏肉と接する機会がないからだ。輸入鶏肉はスーパーマーケットなどではなく、中食や外食産業に流れている。唐揚げや焼き鳥になってしまえば、どこからきたのかはわからない。仕向け先やユーザーによって極端に消費割合が異なるのは日本の市場の特徴らしい。

(2)日本人の特殊な嗜好

 鶏肉の可食部位には大きく分けると、もも肉と胸肉がある。なかで日本人が好きなのはもも肉。関西では特にその傾向が顕著で、消費の8割がもも肉だという。コストをかけて地鶏や銘柄鶏を育てても、胸肉は売れないので、結局ブロイラー(後述するが大量飼育されている安価な品種)と同じ安い価格で売らざるを得ない。その結果、生産者は儲からないという。

 今回の事件を受けて「じゃあ、みんな国産の鶏を使えばいいじゃん」という意見もあるかと思うが、ことはそう簡単ではない。国内の鶏の需要は増えていて、このところ供給不足が続いているのだ。

 2002年に「全農チキンフーズ」がタイ産・中国産鶏肉約7トンを「鹿児島県産 無薬飼料飼育若鶏」と偽り販売していた産地偽装事件があった。『食の問題』はニュースになるたびに騒がれて、すぐに忘却の彼方に追いやられてしまうが、この事件の背景には国内産の鶏の供給不足があったのである。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


ニッポン 食の遺餐探訪

和食を世界遺産に、という動きが農林水産省を中心にはじまっている。日本料理はここ十年余りの世界的な流行になり、外国の料理人の多くも関心を持っていて、誰もがそれを理解しようとしている。しかし、当の日本人の多くは日本料理を理解できていないのではないか。そこでこの連載では、日本の食を支えている道具や食材をつくっている生産者、職人を訪れて、私たち日本人が知らない日本の“食の遺餐”を紹介していく。 

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