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山田厚史の「世界かわら版」

人手不足で始まる賃金インフレで
政府・日銀が狙う一発逆転

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第82回】 2015年4月9日
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 「2年で物価上昇2%」を公約に黒田日銀総裁が就任して2年。大胆な金融緩和の効果はなく、消費税によるかさ上げが剥げ落ちる4月には、物価は0%近辺かマイナスになりそう。それでも黒田さんは「2015年度中には2%を達成する可能性は高い」と強気だ。そうだろう。「2年やったがダメでした」と総裁が頭を下げたらアベノミクスはお終いだ。前進あるのみ。株価は上がった、企業業績も好転した、失業率も改善した。これで消費に火がつけば、好循環が始まる、というのである。

 だが消費低調の理由ははっきりしている。人々の懐具合が悪いからだ。カネもモノも過剰。そんな中で一つだけひっ迫感が露わにな分野がある。ヒトである。「人手不足」がインフレの導火線になる可能性が浮上している。

日本列島を覆う求人難
想定外の「人手不足で物価上昇」

 牛丼チェーンのすき家は8日、アルバイト時給を2.5%アップすると発表した。昨年度一年間で時給は2.9%上がっている。併せると5.4%賃上げだ。「生活水準と労働意欲の向上のため」と親会社のゼンショーはいうが、アルバイトの確保が難しくなっていることが背景にある。

 長時間労働など劣悪な労働環境が問題になったすき家は、世間から非難を浴び人集めに苦労が絶えない。賃金を上げることで不足人員を埋めようというわけだ。

 賃上げに伴い牛丼の価格も上げた。肉を増量し価格は同業他社より抑え気味にした。消費者の反応を見て次の一手を考える。

 デフレ下の外食チェーンは1円でも安く、という価格競争が主流だったが、円安で食材が高騰、値上に伴うお得感が勝負どころになっている。同時に若年層の人手不足が深刻化。店舗展開に採用が追い付かない。

 新卒者の採用も今年は「売り手市場」という。就職協定で採用活動の解禁が1ヵ月遅くなったことも手伝い、企業側の焦りが見える、という。少子化で新卒の数が激減している。これまで不況下の採用手控えが続いていた。社員構成が尻すぼみになり、労働現場に人手不足感が出ていた。

 「いつでも採れる、と鷹揚に構えていた企業も今年は目の色が変わった」と就職斡旋会社はいう。ほぼ全業種横並びで積極採用が始まり、新卒市場は一転して売り手市場という。2年ほど前から、担当者の間では人手不足が問題視されていたが、今年は就職協定の見直しで求人が1ヵ月遅くなり、採用競争が一気に激化した、という。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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