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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

安定的な「CPI前年比2%」を実現する焦点

――森田京平・バークレイズ証券チーフエコノミスト

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]
【第166回】 2015年3月18日
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「逆スタグフレーション」に向かう日本経済:
景気回復下での物価停滞

 景気とCPI(消費者物価指数)の方向感が全く異なる時間帯が、始まろうとしている。昨年10~12月期ごろから、ようやく輸出が実質ベースで増え始めた。背景として、(1)底堅く推移する米国経済、(2)変動相場制移行(1973年2月)後の最安値に減価した実質実効為替(REER)ベースの日本円、の2点が挙げられる。

 (1)が海外景気の面から、(2)が価格競争力の面から日本の輸出をサポートし始めている。今後は民間企業の設備投資が加わる形で、潜在成長率(年率0.5%程度)を明確に上回る景気回復が続くであろう。

 一方、コアCPI(生鮮食品を除く総合CPI)は昨年7月の前年比+1.4%(消費税除く、以下同)をピークとして、直近1月には同+0.2%まで減速している(図表1参照)。これについてはエネルギー価格の下落が主因とされるが、コアコアCPI(酒類以外の食料およびエネルギーを除く総合CPI)も、昨年2月の前年比+0.7%をピークとして、今年1月は同+0.3%まで鈍化している。

 一般に、物価が上昇する中で経済が停滞することを「スタグフレーション」と呼ぶ。そうであれば、足元で見られる景気回復下での物価停滞は「逆スタグフレーション」と呼ぶことができよう。

問われるインフレに対する期待形成:
「合理的」か「適応的」か?

 日本経済が「逆スタグフレーション」に向かう中、日銀にとっての課題は、企業や家計など経済主体のインフレ期待のあり方を見極めることだ。GDPなど多くの指標を予測しながら「合理的」(rational)に期待形成するのであれば、予想インフレ率の下振れは回避できよう。なぜならば、今後は景気回復が続く可能性が高いからだ。

 一方、現実の物価動向に基づいて「適応的」(adaptive)に期待形成をするのであれば、今後予想インフレ率が下振れるリスクが高まる。なぜならば、コアCPIは6月ないし7月に向けてさらに減速し、前年比マイナスに転じる可能性が高いからだ。

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森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

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