両手仲介自体は正しい商取引である。だが、問題なのは、売り主と媒介契約を結んでいる不動産仲介会社が、他社から物件照会があっても「すでに他の客と交渉中」などと偽って物件を渡さず、両手取引を狙うケースである。これが物件の囲い込みと呼ばれる行為だ。

 不動産仲介会社にとっては、売り主の物件がなかなか売れなくても自社の在庫コストが増えるわけではない。それ故、囲い込みで時間をかけてでも両手仲介を行った方がもうけは大きい。

 一方で割を食うのは、売り主である。他社が抱える買い主に対して売れたはずの機会を逃し、いつまでも売れず、結局、値下げせざるを得ないケースも少なくない。

 そもそも、物件売却の媒介契約をした不動産仲介会社が、故意に情報を隠したり独占することは宅地建物取引業法で禁じられており、「発覚した場合は改善の指示処分を下す。それにも従わない場合、業務停止処分もあり得る」(国土交通省不動産業課)。

 にもかかわらず国土交通省は囲い込みの実態調査を積極的に行ってはおらず、それ故、過去に発覚した事例は「把握できる限りにおいては一件もない」(同)。

 囲い込みが表面化しない理由は二つある。

 一つ目は、囲い込みが行われても売り主がその事実を知ることはできないため、被害が表面化しづらいこと。

 二つ目は、不動産仲介会社の間でも囲い込みの事実を見極めるのが難しいということだ。

 買い主の依頼で物件照会したA社に対し、売り主と媒介契約しているB社の担当者が「すでに他の客と交渉中です」と言えば、A社がその真偽を確かめるのは非常に困難である。