ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
森信茂樹の目覚めよ!納税者

わが国の代表的な資産税である
「相続税」と「固定資産税」の論点

格差拡大を許す日本の税制に見える課題(4)

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第91回】 2015年4月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

相続税の課税根拠は
「所得税の補完的機能」へ

Photo:denebola_h-Fotolia.com

 ピケティ氏の問題提起をきっかけに、資産にまつわる税制を色々と考えてきた。最後に、わが国の代表的な資産税である相続税と固定資産税を取り上げ、課税根拠、課題などを考えてみよう。

 まずは、本年1月から4割程度の増税が始まっている相続税である。
              
 相続税の課税根拠は以下の通りである。

 第1に、富の集中防止である。「銀の匙をくわえて生まれてくる」ということわざがあるが、親から莫大な資産を相続し人生の早い段階から経済的基盤を形成することができれば、資産格差は固定化し階層社会ができる。そのことは中期的に見れば、社会の亀裂をもたらし、治安の悪化など国民全体の不利益につながりかねない。

 これが相続税の古くからの課税根拠である。

 しかし、超高齢化が進む時代の相続は「老老相続」と表現されるように、相続人(相続を受ける方)も高齢者である。つまり、「銀の匙をくわえて生まれてきて優雅な生活を送る」というような状況ではない。また、戦前のわが国のように、富が集中し権力と結びつくという状況が生じているとは思えない。

 そこで出てくるのが、「所得税の補完的機能」という捉え方である。これは相続税を、様々な優遇税制によって十分な課税ができなかった被相続人の生前所得について、死亡時に改めて清算課税を行うという考え方である。

 戦後の経済成長期以降、わが国の資産性の所得、つまり株式譲渡益や配当所得への課税は大層甘かった。1987年、88年の税制の抜本改革以前は、おおむね資産所得は非課税であったし、それ以降も原則課税とされたが、長い間証券優遇税制が適用されてきており、課税は十分ではなかった。これを死亡時に補完することがあってもいいのではないか。これが「所得税の補完的機能」としての相続税の考え方である。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

⇒バックナンバー一覧