ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
森信茂樹の目覚めよ!納税者

ピケティの「資産への累進課税」は現実的か?

格差拡大を許す日本の税制に見える課題(3)

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第90回】 2015年3月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

前回は、税務統計から見る限り、わが国の富裕層が増えている原因は、所得格差の拡大というより相続によるところが大きいことを述べた。一方相続税は、本年から4割程度課税強化されたばかりで、少し様子を見る必要があること、税制の問題があるとしたら、20%分離課税となっている資産性所得課税の税率であろう、ということを述べた。

 ピケティ氏は、富を再生産し格差拡大につながる資産が問題だとして、グローバルな協力体制の下での資産課税の強化、純資産への累進課税(第15章「世界的な資本税」)の導入を提言している。現在ある財産税・富裕税と似た概念である。そのことについて考えてみたい。

資産格差は着実に拡大している
欧州では一般的だった「富裕税」

 その前にわが国の資産格差の状況を、「平成18年度年次経済財政報告」(以下、白書)で見ると、図表のとおりである。

 土地、住宅・宅地などの実物資産と、預貯金・債券・株などの金融資産を合わせた資産の格差を見ると、所得のジニ係数が0.3台半ばで推移しているのに対し、資産のジニ係数は0.6前後と高水準で、所得格差より大きい(全国消費実態調査・総世帯)。

 白書ではこの理由について、高所得層になるほど貯蓄率が高いこと、高齢者になるほど資産格差が大きいことを挙げているが、相続については触れていない。

 資産格差の推移を見ると、1980年代後半のバブル期に実物資産価格が上昇し格差は拡大したが、90年代は逆に下落したので格差は縮小、最近では横ばいになっている。もっとも、アべノミクスで株価は2倍以上に上昇し、土地も都市部を中心に長期低落傾向から抜け出しており、今後は資産格差が着実に拡大していくと思われる。

 世界の税制の流れを見ると、欧州大陸諸国では古くから、資産の保有に対して富裕税などの経常的財産税を課してきた。所得税が完全ではない(クロヨンなど捕捉の問題)ことへの補完措置という意味合いがある。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

⇒バックナンバー一覧