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生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

格差大国・米国でも、これだけの困窮者支援がある

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第5回】 2015年4月17日
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米国の貧困と格差の拡大は、日本以上に深刻だ。「自己責任の国」とされる米国では、公的扶助は「甘やかさず、就労へと圧力をかける」という目的のもと、少なくとも現金給付部分については、日本よりも低く抑えられていると理解されている。

しかし米国の福祉を考えるとき、民間セクターによる福祉を無視することはできない。大きな予算規模と組織力を持つこともある民間団体の数々が、公共の一部として、行政を補完する機能を果たしているからだ。

ただの“物資配布センター”ではない
困窮者に尊厳と勇気を与えられる場

米国・サンノゼ市にある非営利団体「Sacred Heart」に設けられた食料品配布コーナーの様子。支援を受ける人々は、ショッピングのように品物を選択できる
Photo by Yoshiko Miwa

 「おはよう、今日は何のために来たの? 何も心配することないわよ。スタッフは親切だし……」

 60歳前後と思われる女性が、私ににこやかに話しかけた。女性は、空の大きなキャリーカートを押していた。2015年2月のある朝、午前8時40分ごろのことだ。

 私は、米国・サンノゼ市中心街から3キロほど離れた場所にある非営利団体「Sacred Heart(聖なる心)」のコミュニティセンターの前にいた。センターが活動を開始するのは、午前9時。ドアの前には、既に50人ほどが行列していた。なお、キリスト教色の濃い団体名ではあるが、現在のSacred Heartには特定の宗教との関係はない。

 私は、女性の好意に感謝し、「日本から来たジャーナリストなんです」と自己紹介した。女性は驚いた様子で、周囲の人々に「わざわざ日本から来たんだって!」と語った。周囲に、さまざまな肌の色の男女数名が集まってきた。一人ひとりに挨拶し、今日、このコミュニティセンターにやってきた理由を尋ねる。「食糧のため」「衣服のため」「仕事を探すため」とさまざまだ。

食料品・衣類の配布を受けに来た人々のカート。帰途は物品でいっぱいになる Photo by Y.M.

 そうこうするうちに、行列の人数は増えていき、100人ほどになった。子ども15人、20代・30代が20人、40代・50代が15人、60代以上が50人、といった感じだ。全体の70~80%は有色人種。現在も根強く残る米国の人種差別が、はっきりと目に見えてしまう。しかし、人々の表情は明るい。知り合いと、あるいは初対面の人々と、楽しげに談笑している。中には、暗い表情を浮かべて下を向いている人もいるけれども。

 9時になった。センターのドアが開き、人々はセンターの中に入っていく。私も中に入った。もちろん、事前に取材アポイントメントは取っている。ディレクターのChad Harris氏に、センター内を案内してもらった。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ

生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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