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第2次リストラ時代(!?)に贈る 私が「負け組社員」になった理由

行き過ぎた責任感が裏目に・・・。出世コースから「左遷」へ、ある幹部候補の転落劇

会社への進言を“経営批判”ととられ、左遷された藤井氏のケース

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第12回】 2009年3月2日
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 一定の「役職」や「地位」を与えられると、多くの人はやる気になるもの。しかし、その思いが強すぎて“行き過ぎた”行動を取ると、かえって裏目に出てしまうときもある。

 今回は、「将来は明るい」といわれるポジションにつきながら、気負いが空回りして、結局は事実上の「降格」になった男性社員を紹介する。

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■今回の主人公
尾形 祐二 仮名(34歳 男性)
勤務先: 中堅進学塾(従業員数230人)。「個別指導」を売りに、1990年代から躍進してきた。とくに首都圏の私立中学・高校の合格率は高い。講師のきめ細かな指導が評判である一方で、問題もおきていた。
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(※この記事は、取材した情報をプライバシー保護の観点から、一部デフォルメしています)

“左遷”のアナウンス

 「尾形祐二、A教室室長を解く。本部・管理部勤務とする」

 尾形はこの言葉を聞いた瞬間、大会議室を出た。今回の人事は、明らかに“左遷”と受け止めたからだ。

 会議室からは、社員の人事異動をアナウンスする人事担当役員の声が響いている。その都度、社員の間からは、どよめきがおきる。それを廊下で聞くと、尾形は室内に戻ることさえ苦痛に感じた。そして、この1年の間に起きたことを思い出した。

 尾形が室長を務めていたのは、A教室。この地域は高級住宅地であり、教室に通う生徒は、親が医師や弁護士、あるいは外資系企業などに勤務する会社員のケースが多い。これらの中には、名門の私立中学や高校を受験する親子がいる。塾はそれを見越して、この地域に教室を9年前に設けた。

 教室の責任者である室長には、エース級の人材を配置してきた。現在の管理担当役員やコーポレイトコミュニケーション部の部長は、この教室の室長経験者である。室長は、講師などをマネジメントし、生徒数や中学・高校の合格者を増やすことが大きな使命だ。

 尾形は、2年前、A教室室長に抜擢された。異業種である不動産販売会社から転職してきてまだ6年目にもかかわらず、異例の大抜擢である。藤井はそのことに大きな優越感を感じた。そして、チャンスを与えてくれた経営陣に対して、感謝の思いも強かった。

緊張感のない、
馴れ合いの職場

 しかし、その思いが“裏目”に出ることになる。講師たちと深刻な対立がおきたのである。教室に通う生徒は、230人。講師は15人。その大半が大学生である。尾形は、ミーティングの場で講師らを厳しく叱った。生徒と講師を観察していると、そこには馴れ合いのようなものを感じたからだ。

 たとえば、前回の講義で課した宿題を生徒がしてこなくても、講師は注意すらしない。「次回は気をつけようね」と笑いながら、受け答えしている講師がいる。

 この塾は、「個別指導」をモットーとしている。教室は20くらいのブースで仕切られ、その中で、講師と生徒が1対1で学習をしていくスタイルである。教室でひとりの講師が十数人の生徒に教えるのが「集団指導」であるが、それとは対極の学習方法だ。「個別指導」はきめ細かな指導になるといわれているが、それがときに馴れ合いになってしまう、と指摘する声もある。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


第2次リストラ時代(!?)に贈る 私が「負け組社員」になった理由

会社から冷遇され、気がつくと「負け組」となってしまった人たちを毎回取材。彼らの実体験を振り返ることで、企業の冷酷さだけでなく、自己防衛できなかった敗因を分析。第2次リストラ時代で生き残る術を探る。

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