大阪都住民投票の焦点
住民参加と二重行政

「大阪都構想」を逃せば大阪の衰退はさらに進む東京都と比べ、大阪では高速道路など社会インフラの整備が遅れている
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「大阪都構想」の賛否を決める大阪市民対象の住民投票が、27日告示された。「大阪都構想」は大阪市の代わりに今の行政区を5つの特別区へ格上げするものだ。

 争点は、大阪市民の住民参加、大阪府と大阪市の二重行政の2点である。

 まず第一に、人口270万人の大阪市に1人の公選市長より5人の公選区長を住民が選ぶという住民参加の方が、よりきめ細かい行政ができる。270万都市を1人の公選市長、公選議会でマネージメントしている先進国都市は日本の他にはまずない。ニューヨークでもロンドンでも、基礎自治は小さな単位で自治権を有する特別区とし、住民が参加している。

 今の大阪市の「区」は24もある。しかし、これは、役人区長の行政区というもので、公選区長の東京都の特別区とはまったく違う。大阪都構想が実現すれば、大阪市に今は1つしかない、教育委員会が5つ、児童相談所が5つ、保健所も5つになる。さらに、予算編成権も5つになって、より細かなエリアに対応できる。

 これは、地方政府内で権限を分権化することによって、住民サービスを向上させるものだ。基礎的自治体として必要な教育委員会、児童相談所、保健所が人口270万人で1つではきめ細かい行政はできないはずだ。

 大阪都構想の反対派は、最初に600億円ものお金がかかると言うが、試算では17年間で2700億円ほど浮くからたいした問題でない。これは、後述する二重行政の問題を見れば、初期コストがかかるとしても、改善のための長期投資とも言える。

 第二に、大阪都構想は、大阪市と大阪府の役割分担を見直して二重行政を排除する目的がある。東京都と東京23特別区を見れば、23特別区は福祉や義務教育など身近なサービス、東京都は交通網整備や都市計画等広域行政サービスと役割分担がなされており、二重行政の声はない。ところが、大阪市と大阪府は、「ふ(府)し(市)合わせ」というくらいに、府と市の行政が二重になっている。

 この点、大阪市長の橋下徹氏の言葉によれば、「大阪市民は広域行政を府税で負担しています。さらに大阪市で広域行政をやってきたから市民は二重の負担を負わされてきたのです」となる。