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田岡俊次の戦略目からウロコ

日本のために中国と対決したくはない
新ガイドラインに垣間見える米国の本音

田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]
【第51回】 2015年5月14日
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 日米両国政府は4月27日ニューヨークでの日米外交・防衛担当閣僚会合(2+2)で「日米防衛協力のための指針」(ガイドラインズ)の改定で合意した。

多国間共同訓練RIMPAC2014(写真:海上自衛隊)

 日本の新聞・テレビでは中国の軍事的台頭に対し、日米同盟が強化されたような報道が多いが実際はそうではない。米国は新指針の公表前に中国に内容を知らせてご機嫌取りに努めたし、日本に対する着・上陸作戦の阻止、排除などに自衛隊が“Primary Responsibility”(一義的責任)を負うとする条項は変わらず、仮に米軍が何もしなくても責任を問われない形になっている。他方、その適用範囲は従来の「極東」や「アジア・太平洋地域」を超えて「グローバル」となり、外国軍の艦船、装備の防護、輸送・補給などの後方支援をどこでも行うことになった。

 日米安保条約第5条では「日本国の施政の下にある領域」に対する攻撃があれば日米が共同行動を取ることになっている。国会はこれを承認し、天皇の認証を得て批准書を交換したのだから、条約と大きく異なる内容の合意を政府がして良いとなれば、国会の承認や批准は無意味になる。日本が攻撃されていないのに、自衛隊に海外で他国軍と共同行動を取らせようとするのならまず安保条約を改定するのが筋だろう。

「中国を牽制」どころか、
米国は事前に中国にお伺い

 指針改定発表の翌々日、4月29日の東京新聞は朝刊3面に2段で「中国、米から事前通知」と伝えていた。28日の中国外務省の定例記者会見で新華社の記者が「日米の新たな防衛協力の指針について、米国は公表前に中国に通知していたのか」と質問したのに対し、洪磊・報道官が「米国側は指針発表前に中国に通知した。中国は釣魚島などの問題に対する厳正な立場を再度伝えた」と答えた、との記事で、これは他紙には見当たらなかったが、中国外務省のホームページでも記者会見の内容が出ていた。中国外務省としては、米国との関係が親密であることを内外に向けて示したかったのだろうが、米国が好意的に事前に通知して来たことを自ら発表するのは非礼だから、記者に質問して貰い、それに答える形にしたのだろう。

 日本では「同盟強化で中国を牽制」との報道が多いが、牽制するはずの相手に発表前に指針を見せて機嫌を取るのでは牽制にならない。米国は中国、日本の双方に良い顔をしたいのだ。

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田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]

1941年、京都市生まれ。64年早稲田大学政経学部卒、朝日新聞社入社。68年から防衛庁担当、米ジョージタウン大戦略国際問題研究所主任研究員、同大学講師、編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和問題研究所客員研究員、AERA副編集長、編集委員、筑波大学客員教授などを歴任。動画サイト「デモクラTV」レギュラーコメンテーター。『Superpowers at Sea』(オクスフォード大・出版局)、『日本を囲む軍事力の構図』(中経出版)、『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』など著書多数。


田岡俊次の戦略目からウロコ

中国を始めとする新興国の台頭によって、世界の軍事・安全保障の枠組みは不安定な時期に入っている。日本を代表する軍事ジャーナリストの田岡氏が、独自の視点で、世に流布されている軍事・安全保障の常識を覆す。さらに、ビジネスにも役立つ戦略的思考法にも言及する。

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