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安倍総理の“米国ヨイショ演説”が日本の戦略的勝利だった理由

北野幸伯 [国際関係アナリスト]
2015年5月15日
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日本が抱える安全保障面での問題を解消するという目的から見ると、安倍演説は大成功だった。ほんの1年ほど前まで、中国の反日プロパガンダは成功しつつあり、日米分断が進んでいたが、AIIB参加見送りと安倍演説によって関係は修復された。中国の脅威にさらされる日本にとって、日米関係修復は「安全確保」に欠かせない最重要戦略である。

米国を褒めまくっただけの演説だが
極めて戦略的に練られている

 「すばらしかった!」「全然ダメだった!」安倍総理の米議会演説について、「賛否両論」が山のように出ている。言論の自由がある日本で、ある演説について、「いい」「悪い」と意見がわかれるのは当然だ。

 そして「絶対的な正解」を求めるのは間違っている。そんなものは、あるはずがないのだから。「安倍演説をどう評価するか」は、その人の立場によって異なる。

単なる「米国ヨイショ演説」に思える安倍演説だが、戦略的に見れば「大成功」だったと言える Photo:New York Times/Aflo

 たとえば、「親米なのか反米なのか?」「親中なのか反中なのか?」「リベラルなのか、保守なのか?」などだ。

 筆者がこれから書くのは、「親米」でも「反米」でも、「親中」でも「反中」でもない、そして、「保守」でも「リベラル」でもない見方である。筆者の視点は「戦略的に見て、安倍演説は成功だったのか?失敗だったのか?」という一点にある。

 最初に断わっておくが、筆者はいわゆる「安倍信者」ではない。「消費税増税」「残業代ゼロ」「移民受け入れ毎年20万人」など、安倍政権の政策に賛成できないことはたくさんある。しかし「安倍憎し」で、総理のすることは「なんでもかんでも反対」というわけでもない。悪いことは「悪い」というが、「成果」は「きちんと評価すべき」という立場である。そういう前提で、続きをお読みいただきたい。

 最初に、安倍演説の内容を見てみよう。この演説は、はっきりいえば「米国を褒めて、褒めて、褒めまくっただけ」といえる。実際の演説から引用してみよう。(太線筆者)

 <「アメリカは、すごい国だ」。驚いたものです。>

 <私の名字ですが、「エイブ」ではありません。アメリカの方に時たまそう呼ばれると、悪い気はしません。>(エイブとは、リンカーンの愛称)

 <日本にとって、アメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした。>

 <親愛なる、友人の皆さん、日本国と、日本国民を代表し、先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼をささげます。とこしえの、哀悼をささげます。>(中韓には謝罪しなかったが、米国にはきっちり謝った。)

 <私たちは、アジア太平洋地域の平和と安全のため、米国の「リバランス」(再均衡)を支持します。徹頭徹尾支持するということを、ここに明言します。>

<日米同盟は、米国史全体の、4分の1以上に及ぶ期間続いた堅牢(けんろう)さを備え、深い信頼と、友情に結ばれた同盟です。
自由世界第一、第二の民主主義大国を結ぶ同盟に、この先とも、新たな理由付けは全く無用です。それは常に、法の支配、人権、そして自由を尊ぶ、価値観を共にする結びつきです。>

米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはなりません。

 一見「米国をヨイショするだけの、属国演説」とも思える。しかし裏を知ってみれば、この演説は、きわめて戦略的に練られていたことがわかる。どういうことか、これから説明していこう。

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北野幸伯 [国際関係アナリスト]

きたの・よしのり/1970年長野県生まれ。モスクワ在住24年の国際関係アナリスト、作家。その独特の分析手法により、数々の予測を的中させている。1996年、日本人で初めて、ソ連時代「外交官・KGBエージェント養成所」と呼ばれたロシア外務省付属「モスクワ国際関係大学」(MGIMO)を卒業(政治学修士)。1999年創刊のメールマガジン「ロシア政治経済ジャーナル」は現在読者数3万6000人。ロシア関係で日本一の配信部数を誇る。主な著書に「隷属国家日本の岐路」(ダイヤモンド社)、「プーチン最後の聖戦」、「日本自立のためのプーチン最強講義」(共に集英社インターナショナル)など。


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