>>(上)より続く

 しかしながら、こうした数々の苦難に直面しつつも、橋下氏は諦めなかった。2014年2月3日、大阪市を廃止した後に設置する特別区の区割り案が法定協議会で否決されたことに伴い、突然橋下氏が大阪市長を辞任。出直し選挙で37万7472人の大阪市民の支持を得て再任され、法定協議会の構成メンバーを強行に差し替え、協定書を強引に決定したのだ。

 住民投票の実施も当初は困難とされたが、2014年12月に突如衆議院が解散されたことに伴い、公明党の現職がいる選挙区に橋下氏自身の出馬をほのめかすなど執念の交渉を行って公明党に翻意させ、住民投票の実施にまでたどり着いた。

 2015年4月の統一地方選挙では、府議会、市議会で第1党の座を守ったものの、どちらも単独過半数はとれず。そして5月17日、前評判での劣勢をギリギリまで追い上げたものの、わずかに及ばず、厳しい結果を受け入れざるを得ないこととなったのである。

メリットとデメリット
改めて振り返る都構想の評価

 ここまで、橋下氏と維新について詳しく解説してきた。なぜなら、今回の住民投票は政策の中身というより、「橋下徹を支持するか否か」というポイントで選択している有権者が多かったのではないか、と感じるからだ。ただし一方で、住民投票間近になって、様々なメディアが都構想の是非について報道を行うなか、橋下氏が一貫して掲げ続けてきた都構想のメリットとデメリットを改めて「我がこと」と捉える市民が急増し、それが投票行動に反映されたとおぼしき側面は無視できない。次に、「都構想の評価」についても改めて触れておかなくてはなるまい。

「都構想」住民投票否決!<br />大阪維新はなぜ失敗したのか(下)大阪市廃止後に設置する5つの特別区(出典:大阪維新の会特設HP

「大阪」と聞いたとき、読者諸氏はどの地域を連想するだろうか。大阪府? それとも大阪市? ちなみに筆者は兵庫県出身だが、東京にいると、時々「松井さんは大阪の方の出身だよね?」と言われることがある。正直、かなり心外である。

 大阪都とは、ひとことで言えば「大阪市をなくして、5つの区に分ける」というもの。「大阪府大阪市中央区」という住所が「大阪府中央区」になるイメージだ。もし都構想が可決されれば、2017年4月に大阪市が廃止され、北区、南区、東区、湾岸区、中央区の5つの特別区が設置される予定だった。

 大阪市は、大阪府全体のGDPの60%、人口の30%、面積の10%を占めている。しかも、大阪市以外の大阪府民も、日中は大阪市で働いたり遊んだりしている人が多い。よって、大阪府と大阪市は「重なり」が大きいのである。行政面でも、都道府県である大阪府と政令指定都市である大阪市が、お互いに同じような仕事をしていたりする。これがいわゆる「2つの大阪=二重行政」問題であり、神奈川県における横浜市、兵庫県における神戸市などとは大きく異なる。橋下氏はこれを「大阪の莫大な借金の根本原因」と問題視したのである。橋下氏が主張した「大阪を変えなければいけない理由」の中身を具体的に見てみよう。