まず相手の話に集中する「聞く」

どうすればいいのでしょうか。
まず、「自分も何か話さないと」といった考えをいったん忘れ、目の前にいる相手の話に意識を集中することです。
私はこれを「傾聴」と呼んでいます。

「傾聴」をしばらく続けていると、「それってこういうことじゃないかな?」「そうか、なるほど!」といった素朴な疑問や感想が浮かんできます。

そうしたら「へぇー」でも「ほぉー」でも構いません。
口に出してみるのです。
オモシロイと思ったら笑ってみる。
共感できたら頷いてみる。

初対面の人なら相手の名前をすぐ覚え、
「○○さん、そうなんですか」
「~なんて素敵ですね、○○さん」

などと相手の名前を繰り返すのもいいですね。

こういうのは、話し下手の人でも簡単にできるのではないでしょうか。
むしろ、すぐ相手の話に割り込んでしまう「話好き」な人より、向いているはずです。

相手はきっと、「なんだか話やすいな」と思い、親しみを感じてくれるでしょう。
自分も相手の話に引き込まれていきます。
次第に会話がスムーズに進み始めるはずです。

さりげなく自分の考えを伝える「聞く」

相手の話を「傾聴」することがまず大事だとしても、それだけでは単なる聞き役にすぎません。
コミュニケーションを通して自分の目標を実現しようと思えば、自分から相手に働きかけなければなりません。

私の場合、テレビのインタビューや討論番組ではいつも、ゲストからこれまで聞いたことのないようなコメントや意外な表情を引き出すことを目標にしていました。
ゲストと仲良くおしゃべりしているだけでは、キャスターやコメンテーターとして失格です。

そこでどうするか。
気の利いたフレーズを使ったり、鋭い突っ込みをしたりするのでしょうか。

いいえ、そんな必要はありません。
疑問形を使うのです。

例えば、相手の話に納得できないとしても、
「それは違うと思います」
と面と向かって言うのではなく、
「なるほど。でも、~という考え方もあると思うのですが、いかがですか?」
と問いかけるのです。
こうすれば、無用の反発を避けながらコミュニケーションを深めていくことができます。

こういう疑問形を使った伝え方を私は「問答」と呼んでいます。
「問答」もまた、ズケズケものを言いがちな「話好き」な人より、話し下手な人のほうが上手にできると思います。

相手の話に集中する「傾聴」と、さりげなく自分の考えを伝える「問答」。
この2つの「聞く」で、コミュニケーションの生産性や効率は間違いなくアップするはずです。