近年、アメリカでビジネスを展開している企業が揺れている。タカタ製のエアバッグがリコールの対象となるとともに、消費者から損害賠償を提起されるなど、クラスアクション(集団訴訟)の危険性が増しているからだ。しかし、日本企業の立場に立って数々の訴訟を戦ってきた、ライアン・ゴールドスティン米国弁護士は、「日本企業はクラスアクションをむやみに恐れないでほしい」と主張する。では、日本企業はクラスアクションにどう備え、どう対応すればいいのか?3回にわたって連載していただく。

「クラスアクション」とは何か?

  国際的にビジネスを展開している日本企業が、アメリカでクラスアクションに巻き込まれるケースが増えています。

 クラスアクションとは、アメリカでの民法訴訟の一種で、集団訴訟手続のことです。クラスとは、「共通点をもつ一定範囲の人々」という意味。つまり、なんらかの事件などによって多数の人々が同じように被害者の立場におかれている場合に、被害者の一部が全体を代表して訴訟(アクション)を起こすことを認める制度です。

 たとえば、こんな事例があります。
 携帯型音楽プレーヤーを販売していた会社が、そのプレーヤーに内臓した電池は連続10時間再生が可能で、しかも27年間使用可能と宣伝していました。しかし、「実際にはそのような性能はなかった」と、一部のユーザーが、そのプレーヤーの所有者を「クラス」として販売会社を提訴したのです。

 クラスアクションの最大のポイントは、「被害者の一部が全体を代表して訴訟を起こす」という点にあります。これは、日本の集団訴訟とはまったく異なる考え方なので注意が必要です。

 日本で集団訴訟を起こすためには、被害者全員の意見を集約して、その一人ひとりから同意を取り付けることによって、原告団を立ち上げる必要があります。

 ところが、クラスアクションでは、そのような手続きを踏む必要がありません。被害者の立場におかれている消費者は、「私は訴訟に参加しない」と意思表示をしない限り、自動的に訴訟に加わることになるのです。つまり、訴訟当事者が桁違いに増えるケースが多いということです。

 もちろん、判決や和解内容は、そのすべての消費者に適用されます。そのため、裁判に負ければ、被告側の企業に莫大な損害賠償義務が課せられる可能性があるのです。

 しかも、クラスアクションの対象は多岐にわたります。
 ソフトウエアや医薬品、機械部品、デバイス機器など多くの製品が対象となるうえ、製品の欠陥から、虚偽または誇大な広告・表示、反トラスト法違反、消費者のプライバシーにかかわる電子データの取り扱いまで、さまざまなテーマが問題とされます。

 まさに、いつ、何が原因でクラスアクションが提起されるかわからない状況なのです。クラスアクションが、アメリカでビジネスを行う企業にとって大きな脅威となっているのも、当然のことと言えるでしょう。