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森信茂樹の目覚めよ!納税者

軽減税率は戦後史上最悪の「経済愚策」である

消費税軽減税率の問題点(2)

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第93回】 2015年5月29日
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戦後史上最悪の経済政策と
政治のポピュリズム

今後、軽減税率議論は生鮮食料品を軸に議論が進んでいくだろうが、その区分けを見ると首をひねらざるを得ない
Photo:naka-Fotolia.com

 消費税10%時における軽減税率について、3案が与党税制協議会から公表された。今後、生鮮食料品を軸に議論が進んでいくだろう。精米は対象になるがパンやうどんはダメ、マグロだけの刺身はいいが刺身の盛り合わせはダメ、野菜も単品はいいがミックス野菜は外されることになる。スーパーはこれを適正に管理し、消費者への説明も求められる。

 莫大な社会コストを導入して得られる効果は、一世帯当たり年間数千円で、かつ高所得者に多くの恩恵が及ぶ(低所得者対策ではない)。新聞は、自ら軽減税率を要求する当事者なので、そのデメリットに目をつぶり、報道は中立でなくなっている。このような「戦後史上最大の愚策」が、政治のポピュリズムの中で行われようとしている。驚くべき政治とマスコミの劣化だ。

議論は「生鮮食料品」中心か?
与党税制協議会の3案の中身

前回に引き続き、軽減税率の課題を述べる。5月22日、与党税制協議会(以下、与党協)は軽減税率に関する具体案として、以下の3案を公表した。今後秋までにこの3案を中心に、政案を得るべく議論が進んでいく。

(筆者作成)

 この3案の中で最も可能性が高いのは、「生鮮食料品」であろう。なぜなら、食料品全般の場合の減収額は、軽減税率を8%とすると1.3兆円に上り、この減収を賄うためには消費税率を0.5%程度引き上げる(10.5%になる)などの増税が必要となる。

 一方「精米」だけではあまりに低所得者対策として実効性は乏しく、公明党のメンツがつぶれることになる。そこで、残る「生鮮食料品」を中心に議論が進むことになるだろう。

 その場合の問題点は、対象品目の選定と、それを執行するための区分経理(インボイス)の導入の2点である。今回は、「対象品目の選定」の問題に的を絞って議論したい。

この区分で納得が行くか?
常識とは異なる「生鮮食料品」

 与党協の資料を見ると、生鮮食料品の定義は食品表示法(消費者庁所管)の規定に従うとの記述がある。これは、税法独自で生鮮食料品を定義すると、事業者に二重管理が生じるなど混乱の元になるという理由である。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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