復活してからまた2ヵ月が経ってしまい、読者のみなさまや関係各位には恐縮する限りなのだが、生まれながらの厚顔無恥で、何事もなかったかのように再開させていただく。

前回に引き続いて、世界最大のモバイル分野の展示会「モバイルワールドコングレス」(以下MWC、今年の展示会を指す場合はMWC2015)の概況をお伝えしよう。今回は通信機器ベンダーの動向に触れたい。

いまなぜ通信機器ベンダーの時代なのか

 通信機器ベンダーとは、基地局やバックボーンネットワークを構成するメーカーのこと。どうしても話は玄人向けになってしまいがちだが、最近はLTEやキャリアアグリゲーション等、最新テクノロジーがそのまま通信事業者の消費者向けマーケティングに使われている。そうした通信サービスの高度化を支えるのが、通信機器ベンダーだ。

 とはいえ消費者からすれば、本来は黒子の存在である。実際、テクノロジーの名称については知っていても、ベンダーの名前まで思いつくのは、やはり玄人筋のはずだ。そんな彼らではあるが、世界の通信業界では存在感の大きさが日に日に増している。

 その大きな理由は、LTEの普及以降、通信規格が世界的に揃いつつあることにある。それ以前の3Gでは、W-CDMAとCDMA2000という二つの規格の系統が存在し、互いに互換性はなかった。またW-CDMAとCDMA2000のいずれも、その普及期にスマートフォンの爆発を迎え、モバイルインターネットの利用シーンが劇的に変わったため、同じ系統の中でも、流派や方言が分かれがちであった。

 しかしLTEの登場によってモバイル業界の通信規格が揃いはじめた。その結果、競争環境の変化が生じた。一つは系統や流派に合わせた対応ではなく、同じ規格の上で詳細な機能やパフォーマンスを競うようになった。もう一つは、多くの通信事業者が同じ通信規格を使う以上、技術や運用の集約を進めた方がスケールメリットを得られるようになった。

モバイル産業の主役はインフラ技術を握る「通信機器ベンダー」へエリクソンが相対するビジネスの規模を説明する同社のハンス・ヴェストベリCEO。10億人の最終利用者が管理対象と認識されている Photo by Tatsuya Kurosaka

 こうなると、単一の通信事業者よりも、そうした通信事業者を複数相手にする通信機器ベンダーの方が、より多くの最終利用者を相手にすることになる。従って、より大きな存在感と責任を持つことになる、ということだ。

 もちろんそれは、いまに始まった話ではない。特に欧州では、3Gの普及が遅れたことで結果的に3Gの流派や方言が揃ったこと、また国をまたいだローミングサービスの提供が活発化したことで、通信サービスの水平分業が進んだことが大きい。