高齢者を地方移住させる前に、やるべきことがある

 日本が直面する大きな問題が、増大する介護需要への対処であることは言うまでもない。最近これに関して興味あるニュースが2つあった。一つは、首都圏では介護施設が不足するため、高齢者の地方移住を進めるべきだとの提言。いま一つは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」の全面施行が始まったとの報道である。

 これらは、「ミスマッチ」の解消で、どちらの問題も改善できる可能性を示している。しかし、高齢者の地方移住は簡単にできるものではない。移住よりも先に、考えるべきことはないだろうか。

日本経済に存在する
重大なミスマッチ

 日本創成会議は、6月4日、東京など1都3県で高齢化が進行し、介護施設が2025年に13万人分不足するとの推計結果をまとめた(「東京圏高齢化危機回避戦略」)。そして、高齢者の地方移住を進めるべきだとした。

 一方、放置された空き家の撤去や活用を進める「空家等対策の推進に関する特別措置法」が5月26日、全面施行された。

 これらは、日本が抱えている問題を象徴している。

 一方で足りない(あるいは、将来足りなくなる)ものがあり、他方で余っているものがある。したがって、これら2つを、何らかの方法で結び付けることができれば、問題のすべてとはいわなくても、かなりの部分が解決できるのだ。つまり、日本全体として見れば、これらは、解決できない問題ではない。

 それにもかかわらずできないのは、需給のミスマッチが生じているからである。足りないものと余っているものをマッチングするのは市場の基本的機能であるが、それが何らかの理由で実現できないのだ。