1928年4月にハーバード大学から半年ぶりにボンへもどったシュンペーターは、1929年初頭にボン大学の講義を再開したと思われる。中山伊知郎、東畑精一への指導も始まる。再び大勢の学生を教え、ドイツ中の大学からの講演依頼をこなし、専門誌や学会へ論文を書き続けて多忙な日々を送っている。すでにドイツを代表する経済学者である。

 1930年秋、再びハーバード大学へ旅立つ。当時は大西洋航路の船旅だから、何度も往復するのは異例だ。客員教授として招いたハーバード大学経済学部は、シュンペーターを完全に移籍させ、ハーバードの顔にしようというプランを持っていたのである。

 1927年10月からの任期1年、1930年秋から1931年初頭までのハーバード大学客員教授、そして1932年10月のハーバード大学正教授就任までの米独往復を、週刊経済誌連載の日付から、その間の主な出来事を含めてもう1度整理してみる(★連載第56回参照)。

シュンペーターによる
ドイツの週刊経済誌掲載と中断期間

●グスタフ・シュトルパーの依頼で寄稿始まる

①「補助金政策」Berliner Borsen-Courier 1926.2.21
②「景気探求」Berliner Borsen-Courier 1926.4.4

【この間半年、中断】
●母、妻子の急死

③「主導力と国家の未来」Der deutsche Volkswirt 1926.10.1

【半年、中断】
●『経済発展の理論』第2版の完成

④「財政政策」Der deutsche Volkswirt 1927.4.1
⑤「財政政策と内閣制度」Der deutsche Volkswirt 1927.4.8
⑥「失業」Der deutsche Volkswirt 1927.5.11
⑦「財政運営の精神と技術」Der deutsche Volkswirt 1927.5.13
⑧「自治体間財政調整論」Der deutsche Volkswirt 1927.6.3

【1年半、中断】
●ハーバード大学経済学部客員教授として赴任(任期は1927年9月―1928年9月だったが、1928年4月に帰国している)
●中山伊知郎のボン大学留学(1927年9月―1929年春)
●東畑精一のボン大学留学(1928年10月―1929年10月)

⑨「相続税」Der deutsche Volkswirt 1928.10.26
⑩「だれが売上税を把握しているか?」Der deutsche Volkswirt 1928.11.16
⑪「賃金政策の限界」Der deutsche Volkswirt 1929.5.28
⑫「賃金政策と学問」Der deutsche Volkswirt 1929.5.28
⑬「財政改革はできるか?」Der deutsche Volkswirt 1929.10.18
⑭「所得税の経済・社会学」Der deutsche Volkswirt 1929.12.20
⑮「世界経済の変化」Der deutsche Volkswirt 1930.9.19
⑯「財政改革が失敗するとき」Der deutsche Volkswirt 1930.2.28