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持続的成長への挑戦:組織の自己変革力とは何か

200年企業に見る“コアバリュー”を根付かせるフェルトリーダーシップ

デュポン株式会社代表取締役社長・田中能之×松江英夫 対談(前編)

松江英夫 [デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授]
【第17回】 2015年7月3日
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構造改革を経て多くの日本企業が過去最高益を記録している。とはいえ、未来に目を向ければ「持続的成長の実現」は依然として大きな課題だ。そして、持続的成長を可能にする鍵は、時代を先取りして自らが変革し続けることができるかどうか、すなわち組織の「自己変革力」である。
多数の企業変革に関わってきたデロイト トーマツ コンサルティング パートナーの松江英夫が、経営の最前線で果敢に挑み続ける経営トップとの対談を通じ、持続的成長に向けて日本企業に求められる経営アジェンダと変革の秘訣を解き明かす。
連載17回目は、創業から200年を超え、まさに今も変革を続けるデュポンの日本法人、デュポン株式会社代表取締役社長・田中能之氏にお話を伺う。

デュポンの百年先を見た
ポートフォリオ・マネジメント

松江 200年を超える企業として持続的成長をされているのは、まさに変革を続ける会社だからだと思います。経営者の立場としてどのぐらい先を見て経営されていますか?

田中能之(たなか・よしゆき)
デュポン株式会社 代表取締役社長 福岡県出身。東京大学大学院理学系研究科卒業後、デュポンファーイースト日本支社(現 デュポン株式会社)に入社。iテクノロジー事業部事業部長などを経て2001年より取締役。米国デュポン社回路基板材料事業グローバルビジネスディレクター、デュポン アジア パシフィック リミテッドで高機能材料事業、半導体製造材料事業のグローバルビジネスディレクターを経て2013年1月より現職。

田中 私は今、日本及び韓国、オーストラリア・ニュージーランドまでの範囲を見ていますが、その範囲で考えるのと、グローバルのトップが考えるのとではだいぶ違うと思います。まずグローバルの話を先に申し上げますと、彼らはだいたい50年ぐらい先までのことを見通しています。

 デュポンは1802年創業で、その間に大きく変革をしています。黒色火薬からスタートをしましたが、今はまったく黒色火薬はありません。最初の100年は黒色火薬でかなり大きくなり、成熟期を迎えて次の100年を考えたとき、黒色火薬だけではいけないなと思ったことを機に多角化を始めて、様々な会社を買収し、結果として1900年代には化学会社になりました。

 そして1900年代終わりに、若手や中堅を何人か集めて、かなりの検証をしたみたいです。そこでこのままの化学会社で、さらに100年は、結構厳しいんじゃないかということになり、化学だけではない、化学プラスアルファが入った形の統合的科学(Integrated science)に進もうということになりました。統合的科学の中にはバイオも入ってきますし、これまで以上に新しいものを取り入れ、幅広い分野を扱うようになります。3世紀目はそういう企業になりますと、1900年代終わりに決めて言い始めたんです。

松江 実際に変革の節目の中にいらっしゃると、当事者としてはどうお感じになるのでしょうか?

田中 私達はそれを聞いて、今まで化学をやってきたけど、化学はどうなるんだろうということと同時に、新しいものはどうやって入れるんだろうと思ったわけです。実際に、そうした説明のあとにいろいろ大型の買収が始まったんです。

 まずパイオニア・ハイブレッド・インターナショナルという遺伝子組換えのアメリカの種子会社を傘下におさめ、それで、大きく舵をとって、種子、バイオに進み始めました。さらに、3年前にはデンマークのダニスコという食品会社、食品酵素の会社を買収しました。

 そういった非常に高額な投資をして事業ポートフォリオを増やしていますが、同時に、3世紀目に向けて、将来的な事業間の高い相乗効果が得られるかどうかの見地から必ずしも重要と思われない事業は売却しています。石油会社や医薬事業、それから、もともとデュポンが発明したナイロンを含む繊維事業部門も機能性コーティング事業も売却しています。

 方向性が見えた中で、買収も売却もやって結果として変革します、というのが中にいるとわかりやすいですね。

松江 変革の時間軸について100年単位で考えていることが特徴的です。

田中 100年やろうと思ったら、100年続いて必要なものをビジネスとしてやらないといけないんです。5年ぐらいで終わるようなビジネスでは100年生き残れないですから。100年間続くビジネスは、将来にも続く大きな流れに乗ったビジネスです。弊社では10年ぐらい前からそれを「メガトレンド」と呼んでいます。メガトレンドは世の中にいくつもありますが、デュポンが自分達のサイエンスで貢献ができる、ビジネスとして成り立つ、その結果として、デュポンが独自な立場をとれるものは何だろうと考え、3つ取り上げました。それが、「フード(食料の増産と確保)」、「エネルギー(化石燃料依存からの脱却)」、「プロテクション(安全と環境の保護)」です。

 食料に関しては人口増加を見据え、食料をきちんと確保するための種子、そして農薬がセットになって食料の増産を図る柱になっています。ダニスコという食品会社の買収も将来の食品事情の改善を見込んでです。ですから、フード関連に力を入れて、それに伴うバイオをやるのは、メガトレンドに乗っていて、これから、50年、100年と考えたときに必ず必要、と自信を持った形でできる分野になっています。

 2つ目のエネルギーについても同様で、化石燃料から脱却するためには、石油、石炭、天然ガスに依存しない再生可能エネルギーは何かと考え、太陽電池や風力、地熱といった分野に対して、私どもで持つ様々な材料が使われるようにすることです。

 3つ目のプロテクションは少しわかりにくいですが、人命を保護する、環境を保護する、いろいろなものを「保護する」という観点で見たときに使えるものを扱うということです。この3つのメガトレンドに乗って、さらに50年、100年というストーリーを描いています。

松江 日本の会社でも長寿企業はありますが、あまり多角化せずにニッチではあるけど、ほかにはない強みで結果的に100年を迎えたというところが多いですね。あらかじめ50年、100年を計画して、そこに向けて進む企業はあまり聞きません。

田中 私も独特だと思います。日本に長寿会社が多いことは世界でも有名ですね。100年、200年の会社はかなりあります。同じことをやって数百年というのは、すごい話だと思います。独特な、ずっと差別化ができる資質をもっているからこそできたと思うんです。ただ、グローバルで、100年、200年となりますと、必ずしも同じものではいけないのではないかと思います。

松江 グローバルに長寿企業であるには、事業のポートフォリオを意識しながらやっていかないといけないということでしょうね。

田中 当社の場合は、変革の意識もありますし、多角化の意識もあります。多角化をした場合に、必ずしもバラバラにするのではなく、多角化したものの間に関連性がある形でやろうという意識もあります。今、三つの柱になる分野があります。まず、農業、健康分野およびフード関連と、今までやっていた素材に関してのサイエンス。この2つがあって、農業分野と素材分野をつなげるような分野として、バイオを素材として様々な材料、燃料あるいはモノマーをつくる工業用バイオです。この3つは必ずしも独立した形になっていません。だから、多角化といっても、自分達のコアになるサイエンスから外れることはしない。
 ですから、私どもは、「デュポンの使命」として、「サイエンスカンパニーです」とうたってるんです。

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松江英夫 [デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授]

デロイト トーマツ コンサルティング パートナー Strategy&Operationsリーダー。中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授(「実践・変革マネジメント論」)、事業構想大学院大学客員教授。「経営変革」に関わる戦略・組織領域のテーマ(成長戦略、M&A、イノベーション、グローバル組織再編)などを多数展開。主な著書に『自己変革の経営戦略 - 成長を持続させる3つの連鎖』『ポストM&A成功戦略』、共著に『クロスボーダーM&A成功戦略』(いずれもダイヤモンド社)など。

 


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