急な出張ではもはやビジネスホテルには泊まれない?

 一泊5000円や6000円とリーズナブルで、急な出張でも飛び込みで宿泊できる。それが「当たり前」とされてきたビジネスホテルに変化が起きている。「予約が取れない!」「値上がりしてる!」そんなビジネスマンたちの叫び声が聞こえてくるのだ。

 ビジネスホテル業界において日本国内で最大の客室数を誇るのが東横イン。日本国内で245店舗、韓国6店舗の合計 251 店舗と総客室は4万9202(いずれも6月16日現在)。この東横インが、興味深い記録を達成している。今年5月2日から3日の24時間で、全店舗の稼働率を100%にし、ギネス記録として認められたのだ。

 観光庁が行っている宿泊旅行統計調査によれば、昨年の宿泊施設全体での稼働率は58.4%。ビジネスホテルは73.8%と平均よりずいぶん高い数値だ。旅館の稼働率は35.9%だから、両者の部屋の埋まり具合には2倍の差があることになる。

 こうしてみると、ビジネスホテルの中で何も東横インだけが圧倒的な稼働率というわけではなさそうだ。ビジネスホテルで、いったい何が起こっているのだろうか。

ビジネスホテルは誰のもの?

 ビジネスホテルに泊まったときに、大きなトランクケースを引き、連れ立って歩く家族連れを見たことはないだろうか。私は2年前、取材に訪れた東京蒲田のビジネスホテルで初めてその光景を目撃した。ロビーで新聞を読みくつろぐサラリーマンの横を、受付をすませた家族連れが歩いていく。フロントの女性に聞いてみると、ここ数年、家族連れだけでなく、女性の2人連れの姿も見るようになったと話してくれた。

 大自然を堪能できる秘境にひっそりと建つビジネスホテルというのは、いまだに聞いたことがない。それはそうだ。ビジネスホテルは、基本的に交通の便のいいところに出店する。朝早くからあちこち駆けずり回る必要があるビジネスマンにとって、交通の便が何よりも重要だからだ。しかし、駅から徒歩3分や5分、ときには駅から直通といった立地が宿探しの第一条件になるのはビジネスマンだけではない。限られた時間で、いろいろな観光地を見て回りたい観光客にとっても、同様に魅力的に映ることだろう。