創続総合研究所

ドラマの中ばかりではない、若い後妻vs先妻のバトル
~相続だからこそ、むき出しになる感情がある

本音が出ないと、話は進まない

八木 あえてうかがうと、最初に「7対3で」という、明らかに依頼人に有利な数字を示したことで、相手が頭にきて態度を硬化させた、ということはありませんか?

浅野 私は、そういう「不公平な」提案をすることが、よくあります。誤解を恐れずに言えば、「これは揉めるかも」と感じる相続の時ほど、そういうやり方をするのです。早い段階で、相手の本音を引き出すためにほかなりません。
 今のケースでも、「7対3」という数字を出したからこそ、「自分が不利な相続は許さない」という相手の気持ちが、明確に確認できたのです。同時に、なにも「総取り」したいというわけではなく、金額的にはイーブンで折り合うのだな、という感触もつかめました。
 最も困るのは、相続人同士の協議の場で、「私はそんなにいらないから」というような態度をとる人です。そういう人に限って、相続税の申告期限(*1)が近づいてから、「じゃあ姉さんの取り分は△×万円で」という話になったとたん、「ちょっと待ってよ!」と、協議を振り出しに戻したりする。ですから私は、「『そんなに』というのは、いくらのことですか?」と必ず聞くようにしているのです。
 付言しておけば、申告期限までに遺産分割協議がまとまらなければ、配偶者控除といった税の軽減制度を使うことはできません。3年以内に協議をまとめて「更正の請求」(*2)をすれば、お金を戻せますが、いったんこじれた相続は、そのまま何年もズルズルいってしまうことが、少なくないんですよ。

八木 揉めるなら早めに揉めて、解決法を探っていった方がいい場合もある、ということですね。逆に、もし相続人の立場になったなら、最初から包み隠さず、考えていることを言うのが大事。

浅野 わがままはダメですよ。あくまでも、常識の範囲で考えを述べてください。


*1 相続税の申告期限 相続開始を知った日(被相続人の死亡した日)の翌日から10ヵ月以内。
*2 更正の請求 税の申告後、納めた税金が高すぎた場合に、税務署に対して還付の請求を行うこと。

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八木美代子 [株式会社ビスカス代表取締役]

早稲田大学卒業後、リクルート入社。1995年に株式会社ビスカスを設立。税理士を無料でご紹介するビジネスモデルを日本で初めて立ち上げ、現在まで10万件以上のマッチングを実現。相続に強い税理士のみを集めたサイト「相続財産センター」を運営し、相続コーディネーターとしても業界ナンバーワンの実績を誇る。著書に『相続の現場55例』(ダイヤモンド社)、『相続、いくらかかる?』(日経BP社)、『相続は『感情のもつれ』を解決すればお金の問題もうまくいく』(サンマーク出版)などがある。
株式会社ビスカス

 


相続の現場~争いから学ぶハッピー相続術

相続の別名は、「争続」。仲の良かった兄弟姉妹が親の遺産を前に骨肉の争いを演じるというのは小説やテレビドラマの中だけの出来事ではないようです。諍いの中心はもちろん「お金」。ですが兄弟姉妹には、他人がうかがい知ることのできない「本音」「思い」があるようで……奥底にある「心の綾」を解きほぐすと争いから一転、分かりあえるのが家族。そうした「ハッピー相続」の例を解説します。

「相続の現場~争いから学ぶハッピー相続術」

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