「Gmailを使って、データをネット上に置く」という仕事の進め方について、これまで述べてきた。

 これは、個人の仕事の進め方と関連するだけでなく、PCシステムの設計、組織のあり方、さらには、社会のあり方にも関係する問題である。その意味では、たいへん大きな広がりを持つ問題だ。

 しかし、われわれの考え方や行動様式の惰性、組織のルール、社会的インフラストラクチャなどが、こうした方式への移行を邪魔することがある。少なくとも、これらによって、新しい技術環境の持つ潜在力を十分に活用できない可能性がある。

 第一に問題になるのは、「グーグル・フォビア」(グーグル恐怖症)とでも呼びうるものだ。

 すでに述べたように、ITの専門家ほど、Gmailに対して拒否反応を示す。「プライバシーをグーグルに握られてしまう」と恐れるからだ。こうした考えが「グーグル・フォビア」である。「Gmailを使って、データをネットワークの上に置く」という方法をとれるかどうかは、まず最初に、「グーグル・フォビア」を克服できるかどうかにかかっている。

 第11回で述べたように、外付けHDでの事故はかなりの確率で起こりうる。だから、Gmailのログにデータを置くほうが安全である。よく考えれば、このことは納得できるはずだ。

 しかし、われわれは「データは自分のPCに格納する」という方法を長年にわたって続けてきたため、それが習慣になってしまっている。そして、なかなかそれから脱却することができない。無意識のうちに、「データはPCに」という操作をしてしまうのだ。

 たとえば、PDFなどの資料がメールに添付して送られてきたとしよう。多くの人は、無意識のうちにそれをPCにダウンロードしようとするだろう。しかし、それは必ずしも必要なことではない。ネットワーク上に置いたままで作業し、作業結果を送り返せばよい。後で必要になったときには、再びネットから取り出せばよいのだ。だから、PCにダウンロードする必要はないのである(ただし、バックアップのためにPCにも保存しておくことは、意味があるだろう)。

 したがって、この方式に移行するには、行動習慣を積極的に変えてゆく必要がある。

 「データを自分のPCに格納する」という方法は、ついこの間までの技術条件下では、必然的なものだった。PCの初期の段階(1980年代)には、PCは孤立した機械であったため、データはそこに格納するしかなかった。インターネットやメールを使うようになってからも、常時接続ができなかった時代には、「データを自分のPCに格納する」という方法は、当然のものであった。常時接続ができるようになっても、ログの容量が限定的だったため、「データをネットに置く」という方法は、特別の場合にしか使われなかった。私の場合でいうと、「複数の場所で作業をする場合、書きかけの原稿など作業中のデータをメールで自分に送る」という場合が主だった。

 われわれが行動様式を変えたとしても、PCやソフトの構造が、こうした使い方には向いていない面もある。たとえば、ウェブのブックマーク(「お気に入り」)は、PCのブラウザに記憶されている。こうした情報(「マシン・スぺシフィックな情報」と呼ぶことができる)は、そのままでは別のマシンでは使えない。何らかの方法で、そのコピーを別のマシンに送る必要がある。

1
nextpage
上枠
下枠
underline
昨日のランキング
直近1時間のランキング
この娘に会える電子書籍。


iPhoneであの話題作を!
【憧れのクレジットカード】
「ステータスカード」を使いこなす人に出会いたい!20代女子の淡い憧れは叶うのか…

おすすめの本
おすすめの本
野口悠紀雄氏の最新刊「円安バブル崩壊」好評発売中!

急激な円高と止まらぬ株価下落。日本経済はいまや深刻な危機に。「サブプライムショック」はあくまでも引き金に過ぎない。根本的な原因は、あり得ない円安・低金利政策にある。経済政策の無能を厳しく指弾する痛快経済エッセイ! 1680円(税込)


話題の記事

週刊ダイヤモンド

特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約14冊分お得です。さらに3年購読なら最大45%OFF。

ハーバード・ビジネス・レビュー

詳しくはこちら

1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。

ZAi

詳しくはこちら

年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。

Diamond money!

詳しくはこちら

3月・6月・9月・12月の1日発売(季刊)。1年購読(4冊)すると、市販価格 3,920円→3,200円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。

Keyword
Information

野口悠紀雄 [早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『「超」整理法』シリーズ、『資本開国論』『モノづくり幻想が日本経済をダメにする』等がある。 野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄が探る デジタル「超」けもの道

本当に使える情報源を求めて、野口教授が広大なインターネット・ワールドを駆けめぐる。各種情報源の特徴から使い勝手まで、辛口コメントを交えて大公開!

「野口悠紀雄が探る デジタル「超」けもの道」

⇒バックナンバー一覧