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野口悠紀雄が探る デジタル「超」けもの道

「グーグル恐怖症」を克服できるか

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第15回】 2008年3月3日
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 「Gmailを使って、データをネット上に置く」という仕事の進め方について、これまで述べてきた。

 これは、個人の仕事の進め方と関連するだけでなく、PCシステムの設計、組織のあり方、さらには、社会のあり方にも関係する問題である。その意味では、たいへん大きな広がりを持つ問題だ。

 しかし、われわれの考え方や行動様式の惰性、組織のルール、社会的インフラストラクチャなどが、こうした方式への移行を邪魔することがある。少なくとも、これらによって、新しい技術環境の持つ潜在力を十分に活用できない可能性がある。

 第一に問題になるのは、「グーグル・フォビア」(グーグル恐怖症)とでも呼びうるものだ。

 すでに述べたように、ITの専門家ほど、Gmailに対して拒否反応を示す。「プライバシーをグーグルに握られてしまう」と恐れるからだ。こうした考えが「グーグル・フォビア」である。「Gmailを使って、データをネットワークの上に置く」という方法をとれるかどうかは、まず最初に、「グーグル・フォビア」を克服できるかどうかにかかっている。

 第11回で述べたように、外付けHDでの事故はかなりの確率で起こりうる。だから、Gmailのログにデータを置くほうが安全である。よく考えれば、このことは納得できるはずだ。

 しかし、われわれは「データは自分のPCに格納する」という方法を長年にわたって続けてきたため、それが習慣になってしまっている。そして、なかなかそれから脱却することができない。無意識のうちに、「データはPCに」という操作をしてしまうのだ。

 たとえば、PDFなどの資料がメールに添付して送られてきたとしよう。多くの人は、無意識のうちにそれをPCにダウンロードしようとするだろう。しかし、それは必ずしも必要なことではない。ネットワーク上に置いたままで作業し、作業結果を送り返せばよい。後で必要になったときには、再びネットから取り出せばよいのだ。だから、PCにダウンロードする必要はないのである(ただし、バックアップのためにPCにも保存しておくことは、意味があるだろう)。

 したがって、この方式に移行するには、行動習慣を積極的に変えてゆく必要がある。

 「データを自分のPCに格納する」という方法は、ついこの間までの技術条件下では、必然的なものだった。PCの初期の段階(1980年代)には、PCは孤立した機械であったため、データはそこに格納するしかなかった。インターネットやメールを使うようになってからも、常時接続ができなかった時代には、「データを自分のPCに格納する」という方法は、当然のものであった。常時接続ができるようになっても、ログの容量が限定的だったため、「データをネットに置く」という方法は、特別の場合にしか使われなかった。私の場合でいうと、「複数の場所で作業をする場合、書きかけの原稿など作業中のデータをメールで自分に送る」という場合が主だった。

 われわれが行動様式を変えたとしても、PCやソフトの構造が、こうした使い方には向いていない面もある。たとえば、ウェブのブックマーク(「お気に入り」)は、PCのブラウザに記憶されている。こうした情報(「マシン・スぺシフィックな情報」と呼ぶことができる)は、そのままでは別のマシンでは使えない。何らかの方法で、そのコピーを別のマシンに送る必要がある。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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