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海外事業見直しに至った
野村證券の“高い授業料”

週刊ダイヤモンド編集部
2007年10月22日
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 “1456億円の授業料”とはずいぶん高くついたものである――。

 証券最大手の野村ホールディングスは、米国のサブプライムローン(低所得者向けの住宅ローン。金利は高く設定)に関して、2007年第2四半期(7~9月)で730億円の損失を追加計上すると発表した。1~9月の累計(サブプライムローン関連)では1456億円の損失となる。

 古賀信行・野村ホールディングス社長は今回の損失について「会社全体としてリスク管理体制の不足に帰する部分が大きく、今回の教訓を生かしてリスクマネジメントの幅を広げる必要がある」と反省の弁を表明した。

 日本の金融機関では断トツの額となるこの損失について、市場の評価は二分している。すなわち「日系で唯一、欧米市場のRMBS(住宅ローンの証券化)市場に深くかかわっていたからこそ損失がふくらんだ」という“名誉の負傷”を評価する声と、「ロシアの金融危機をきっかけとした1998年のCMBS(商業用不動産ローンの証券化)ビジネスで巨額の損失を出した経験から、なにも学んでいない」とする批判の声だ。

 ちなみにサブプライムローン関連の損失は「これで膿を出し切った」(大手機関投資家)としてこれ以上ふくらまないとの見方が大勢で、損失発表の翌日も株価は10円安程度と落ち着いている。

 古賀社長は15日に行なった会見で、米RMBSビジネスからの撤退や、自らを含めた代表執行役3人の報酬の3割返上(2008年3月まで)を発表。また、事業の推進役であるグローバル・マーケッツ部門CEOの揚村康男・野村證券常務について、グローバル・マーケッツ部門CEOの職を解任するなど、責任を明確にした。

 こうした処分について、「損失額を考えると、古賀社長の報酬3割カットは軽過ぎるのではないか」(証券関係者)との声もあるが、もともと国内畑出身で、リスクの高い欧米のマーケットビジネスには慎重だったといわれる古賀社長にすれば、国際部門の尻ぬぐいで重い責任を取らされるのは回避したいところだろう。

 また、ゴールドマン・サックス証券やシティグループなど、米国の一流金融機関も軒並み大幅な損失を計上しているため、野村證券固有の問題ではないという気持ちもあるだろう。

 「(ハイリスク・ハイリターンのマーケットビジネスについては)絶えず完全に損失を回避するのは、神でもない限り不可能」(古賀社長)という感情的なコメントにその思いが表れているようだ。

 今後は、今回の高い授業料をきっかけとして、海外ビジネスの大幅な見直しを進める意向と思われる。10年前のCMBSの損失のときと同様、「どぶ板を踏んで稼いでいる国内部門の利益を、格好はいいが儲からない国際部門に食いつぶされるのはたまらない」という野村内部の不満は大きい。

 このため、当面は米国でのビジネスについて、安定収益の見込める資産運用ビジネスや成長性の高い電子商取引部門などに、経営資源を集中する縮小路線を余儀なくされそうだ。その後は「世界の野村」の看板を維持するために、長期的な海外戦略をどう描くか、という重い課題を突きつけられることになる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 倉田幸信)

※『週刊ダイヤモンド』2007年10月27日号掲載分

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