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ネットジャーナリズムの光と影 奥村倫弘

新聞と雑誌が死んだ後、
ネットはその役割を果たせるか

奥村倫弘 [ワードリーフ 代表取締役社長]
【第5回】 2015年7月9日
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もし日本のメディアからジャーナリズムがなくなってしまったら?

 この連載が最終回を迎えるにあたり、編集部から「なんてことのない記事を提供しているメディアはともかく、真面目なメディアがマネタイズで苦しんでいますよね? 真面目なメディアが死んだらどうなるのか書いてくれませんか?」という難しいお題をいただきました。そもそも、メディアが提供している「ニュース」とは何なのか? そこから考えて行くことにしましょう。

 インターネットが世の中に普及する前の時代とその後の時代で、ニュースの定義・概念が明らかに変わりました。しかし、多くの人にとって、それはまったく「明らか」ではないかもしれません。少し説明が必要でしょう。

 ネットが出現する前の時代のニュースは、新聞やテレビの報道番組に流れる情報がニュースでした。ネットが出現した後の時代のニュースは、「ニュースアプリ」「ニュースポータル」などに掲載されている情報そのものだと、少なくとも外形的にはそう理解されているはずです。ただ、その情報がどういう性格を帯びているのか、何を目的に掲載されているのかについては、あまり注意が払われてきませんでした。

 「ニュース」と似た言葉に「ジャーナリズム」という言葉があります。前者は何かしらの新しい出来事を伝える文章や映像といった“プロダクト”を指す言葉ですが、後者はニュースを作る過程における考え方や意思、目的、あるいは理念・思想を指す言葉です。

 一般的に、ネットが出現する前の時代は、(体系的ではないにしろ、実地を通じて)トレーニングされた職業的なジャーナリストが「ジャーナリズム」という理念に従ってニュースの生産を担っていたのに対し、ネットが出現した後は、特別なトレーニングを受けていなくても誰でもが記事を書ける時代となり、「ジャーナリズム」という理念や思想を持たない文字列や動画が“ニュース”として生産され、流通するようになりました。

 その代表格が、これまでに何度も見てきた、人の書いた記事やすでにそこにある情報に形ばかりのコメントを足したような「なんてことのない記事」です。ネットが出現する前の時代にも「なんてことのない記事」はあったでしょうが、少なくともニュースとして社会的に認知されてきませんでした。しかし、今はニュースサイトやニュースアプリの中に、これが堂々と掲載されており、ニュースとして扱われています。これが、ネット前時代のニュースとネット後時代のニュースの明らかな違いです。

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奥村倫弘[ワードリーフ 代表取締役社長]

1969年大阪府生まれ。'92年、読売新聞大阪本社入社。福井支局、奈良支局、大阪経済部を経て、'98年、ヤフー株式会社入社。R&D統括本部編集本部本部長を務め、2013年より、同年スタートしたニュースサイト「THE PAGE」の運営会社であるワードリーフ株式会社の代表取締役社長を務める。


ネットジャーナリズムの光と影 奥村倫弘

インターネットの発達とスマートフォンの普及で、私たちのニュースとの接し方は大きく変わりました。しかし、今あなたの見ている記事は本当に価値がある情報と言えるのでしょうか?この連載では、元ヤフートピックス長を務め、現在ではニュースサイト「THR PAGE」の運営を行うワードリーフ代表・奥村倫弘さんが、ネットジャーナリズムの光と影を解説します。

「ネットジャーナリズムの光と影 奥村倫弘」

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