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ネットジャーナリズムの光と影 奥村倫弘

「編集者の不在」がネット記事の信頼を失墜させた

奥村倫弘 [ワードリーフ 代表取締役社長]
【第4回】 2015年6月25日
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ブログの出現で、いまや誰もが情報発信者になれる時代に。ネットメディアの激増は、いい影響ばかり与えているわけではない

 インターネットメディアという業界では、何百、何千という編集者やライターが仕事に関わっています。しかし、誰もが情報発信者になれる「ソーシャルの時代」と、それを支え人間の代わりに機械が価値判断を下す「テクノロジーの時代」において、いつまで自分たちが安泰でいられるのかとヒヤヒヤしている編集者も多いはずです。実際、すでに職や役割を失った、あるいはこれから失う編集者やライターは少なくないでしょう。

 新聞やテレビというのは、巨大な装置産業で、大きな資本がないと参入できない業界です。そのため、新聞社やテレビ局など伝統的なメディアに勤める“伝統的な記者”の数は、自然と限られてきました。しかし、インターネットが普及した現在、大きな資本や特別な技術力を持たない個人であっても自ら文章を書いたり、人の書いた文章をまとめて発表したりできる「誰もが情報発信ができる時代」になりました。

 引き金を引いたのは、言うまでもなくブログの出現です。2003年より後に起きたブログブームにより、新聞や雑誌の力を借りなくても、自分たちの力で意見表明できるようになりました。いまは、ブロガーという言葉を昔ほど聞きませんが、ブログという仕組み(たとえばWordPress)は、商用メディアにも転用され、コンテンツの流通か生産かを問わず、ネットメディアの数を爆発的に増やしました。それに比例するように、次々とライターや編集者が登場。いまではそこに一種の供給過剰とスキル格差の拡大が生じています。

編集者に求められてきた5つの仕事

 コンテンツプロバイダーである「生産サイド」のメディアと記事をキュレーションする「流通サイド」のメディア、それぞれに編集者と呼ばれる人たちが日々働いているわけですが、編集という仕事は、おおよそ次の5つに分けることができます。(1)取材(2)執筆(3)編集(4)校正・校閲(5)編成の5つです。

 ネットメディア全体を俯瞰した場合に、生産サイドの編集者は、(1)から(4)を、流通サイドの編集者は(3)から(5)に携わることが多いはずです。ただ(4)の校正・校閲は、ネット専業メディアにおいて専門的な人員を配置することは稀です(というか聞いたことがありません)。

 少し番外的に説明を加えておくと、校正・校閲という仕事は地味ですが、実は重要な役割を担っています。校正というのは「シュミレーション」と「シミュレーション」のような表記の勘違いや誤字脱字を修正します。一方の校閲は、事実関係を検証する役割です。たとえば「日本の若者の自殺率は世界一高い」という表記があったとした場合、「ホントかよ?」と疑問を挟んで、編集者や筆者に修正を提示します。

 つまり、校閲とは、記事の間違いを絶対に許さない「門番」のような役割なのですが、(3)の編集が兼務することが多くなっています。伝統ある新聞社でも「支局校閲」などといって、校閲を専門とする本社の校閲記者ではなく、地方支局にいる一般の記者らに校正や校閲をさせる例が少なくありません。

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奥村倫弘[ワードリーフ 代表取締役社長]

1969年大阪府生まれ。'92年、読売新聞大阪本社入社。福井支局、奈良支局、大阪経済部を経て、'98年、ヤフー株式会社入社。R&D統括本部編集本部本部長を務め、2013年より、同年スタートしたニュースサイト「THE PAGE」の運営会社であるワードリーフ株式会社の代表取締役社長を務める。


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インターネットの発達とスマートフォンの普及で、私たちのニュースとの接し方は大きく変わりました。しかし、今あなたの見ている記事は本当に価値がある情報と言えるのでしょうか?この連載では、元ヤフートピックス長を務め、現在ではニュースサイト「THR PAGE」の運営を行うワードリーフ代表・奥村倫弘さんが、ネットジャーナリズムの光と影を解説します。

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