一時期より落ち着いたとはいえ、従軍慰安婦報道問題に関する朝日新聞批判は収まる気配を見せない。その煽りを受け、世間では新聞報道全体への不信感が高まっている。足もとでは、朝日の記者をはじめ、同業の新聞記者たちの口からも辛辣な声が聞こえてくるようになった。朝日新聞は許されるべきか、許されるべきでないか――。現役新聞記者・元新聞記者たちの生の声を通じて、改めて問題の背景を検証し、今後朝日が進むべき道を考えたい。(取材・文/池田園子、編集協力/プレスラボ)

続く迷走と朝日新聞バッシング
問題の本質はどこにあるのか?

 朝日新聞は許されるべきか、許されるべきでないか――。

 一時期より落ち着いたとはいえ、朝日新聞批判は収まる気配を見せない。目下、多方面から激しい朝日新聞バッシングが起こっている。10月6日の衆院予算委員会では、安倍首相が「(従軍慰安婦に関する誤報が)日韓関係に大きな影響、打撃を与えた。記事によって傷ついた日本の名誉を回復すべく、今後努力してほしい。報道機関の責任は重い」という趣旨の発言をした。

 ことの発端は、朝日新聞が8月5日付と6日付の朝刊で、「慰安婦問題を考える」と題した検証記事を掲載し、従軍慰安婦に関する過去の自らの報道を誤りだったと認めたことにある。誤りがあったとされたのは、従軍慰安婦報道の中核を成す、いわゆる「吉田証言」に関してである。それとほぼ時を同じくして、福島第一原子力発電所事故に関する、いわゆる「吉田調書」にまつわる報道が不適切だったことも明らかになった。

 同時期に2つの「吉田問題」への釈明を行ったり、9月末には(従軍慰安婦問題の)吉田証言に関する記事の執筆者が異なっていたことについて二度目の訂正を出したりと、朝日報道の迷走ぶりは深刻だ。

「新聞報道全体に対する世間の不信感を募らせた」「朝日は廃刊すべきではないか」――。足もとでは、識者のみならず、朝日の記者をはじめ、同業の新聞記者たちの口からも辛辣な声が聞こえてくるようになった。従軍慰安婦報道問題は、今や新聞というメディアの岐路を語る上においても、象徴的な騒動として捉えられ始めているのだ。

 そこで今回は、現役新聞記者・元新聞記者たちの生の声を通じて、改めて従軍慰安婦報道問題が批判されている背景を検証し、今後朝日新聞が進むべき道、さらには日本の新聞報道が肝に銘じるべき教訓について、考えてみたい。