年が明けた1月下旬、瀬戸が小城山上海を再訪した。ついに株主問題の解決を図りにきたのだ。

 早速、スティーブと健太は瀬戸に直近の状況をアップデートした。

 まず、スティーブが1月の実績見込みを簡単に報告した。

「当社も、1月には単月黒字化を達成することが確実になりました。生産品質は飛躍的に改善し、不良率が半年前の2150ppmから350ppmまで改善しています。生産品質の改善によって顧客からの信頼も高まり、少しずつ注文が増えています。また、コスト削減の取り組みも効果が出始め、業績改善に大きく貢献しています。そして先週、ついに新製品コーダを市場に投入することができました」

「ついにコーダが販売開始か。それは良かった!ところで、サプライヤーとの関係はどうなっているかね?」

「小城山がつなぎ融資をしてくれたおかげで、支払いを延期している先にも、段階的に支払いを再開しています。ウェイの後任の新しい調達責任者が、彼らとの関係維持に尽力してくれています」

「それは良かった。2月は中国の旧正月だから、帰省する従業員に支払う給与のために多くの会社で資金ニーズが高まる。それまでには資金繰りの問題が解決できそうで良かった」

「その意味では、本社からの資金支援はギリギリのタイミングでしたね」と健太も答えた。

「そういうことだ。明日、私は地方政府の高官に会って、小城山製作所が当社を完全子会社化する提案をしてくるよ。小城山製作所は、彼らが保有する25パーセントの株式をできるだけ早く取得する予定だ」

 翌朝、瀬戸は地方政府の投資会社社長と面会し、早々と子会社化の話をまとめてきた。地方政府としても、赤字続きの小城山上海は長年のお荷物だったらしい。投資会社の社長としては、自分の任期中にどうにか黒字化の目途をつけ、小城山製作所に売却することができるのであれば、まさに渡りに船の提案だったようだ。地方政府は、自ら所有する小城山上海の25パーセントの株式を5月末までに小城山製作所に譲渡することに合意した。

 昼過ぎに小城山上海に戻ってきた瀬戸から交渉の結果を聞いたスティーブと健太は、これで資金繰りの問題が根本的に解決されると、歓声をあげた。