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企業の公募増資ラッシュで
「資金繰り恐慌」は起きるのか?

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第105回】 2009年12月15日
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 今年1月から11月まで、わが国の企業が行なった株式発行による増資は約3兆5000億円に上る。今後も大手企業の増資が続くと見られ、1年間の増資金額は5兆円に達するという。まさに凄まじい勢いの増資ラッシュである。

 増資とは、企業が新たに株式を発行して資本金を調達する行動だ。何故、これだけの増資ラッシュになったかというと、2つの要因がある。

 1つは、企業がキャッシュを必要としていることだ。昨年のリーマンショック以降、米国をはじめとする世界経済は大きく落ち込んだ。それに伴い、米国への輸出依存度の高い、わが国の産業界は大きな痛手を受けた。
有体に言えば、その痛手を埋めるために、キャッシュが必要なのである。
 
 もう1つの要因は、企業の国際競争力を維持する目的だ。経済のグローバル化に伴い、世界市場の競争は一段と激化している。激しい競争に生き残るためには、最新の設備によって低コストで魅力のある製品を作ることが必須となる。

 そのためには、多額の設備投資や研究・開発費が必要になる。特に競争が激化しているIT分野では、米国や韓国、台湾の企業が積極的な投資に動いる。

 それを傍観しているだけだと、わが国企業の競争力が急速に低下することは避けられない。そのために、増資をして財務体力を強化することが求められるのである。

 一方、株式増資が多いことには問題点もある。

 まず増資ラッシュは、株式市場には短期的にマイナスに作用することが多い。新しい株式が発行されるということは、株式の供給が増えることだから、需要が一定の場合には株価水準は下落することが想定される。

 また企業にとっても、発行済み株式数が増えるため、当該企業の株価も低下する可能性が高い。

 そして、もう1つ頭に入れておくべきポイントは、過去の経験から見て、増資ラッシュが続いた後、株価が軟調な展開になるケースが多かったことだ。来年初頭以降の株式市場の展開には、注意が必要だ。

 このように、メリットもデメリットもある「株式増資」が市場に与える影響は、どれほどのものなのか? さらに詳しく説明しよう。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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