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第三者委員会報告でも終わらない東芝問題の根深さ

八田進二・青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授に聞く

ダイヤモンド・オンライン編集部
2015年8月3日
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時間の経過とともに次々と不正が判明し、歴代3社長の引責辞任にまで発展した東芝の不正会計問題。第三者委員会の報告書が世に出たが、八田教授は「これで問題が総ざらいされたとは、とても言えない」と指摘する。(聞き手/ダイヤモンドオンライン編集部 津本朋子)

東芝問題は俗にいう「粉飾」
罪の重さはどう考えるべきか

――4月に疑惑が持ち上がった当初は「不適切会計」とされていた東芝の問題ですが、今では「不正会計」と呼ぶメディアもあります。一般的には「粉飾決算」という言葉もありますが、東芝問題はどう呼ぶべきなのでしょうか?

はった・しんじ
慶応義塾大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科商学専攻修士課程修了、慶応義塾大学大学院商学研究科経営・会計学専攻博士課程単位取得満期退学。現在、日本内部統制研究学会会長、日本監査研究学会理事、金融庁企業会計審議会臨時委員(監査部会)などに就任。「事例でみる 企業不正の理論と対応」(監修 同文舘出版)、「企業不正対応の実務Q&A」(監修 同文舘出版)、「会計プロフェッションと監査」(同文舘出版)など、著書多数。

 不適切会計とは、最初に東芝が自分たちで言っていた表現です。決算処理をするときに、何か間違った手続きがあったというニュアンスで捉えられる言葉です。つまり間違い(エラー)がどこかで起きた、と。

 これに対して不正会計とは、金融商品取引法の「虚偽の表示」に当たります。つまり、故意に行ったということです。粉飾決算というのは会計の専門用語ではありませんが、東芝の事例は不正会計であり、これは俗にいう粉飾決算だと言えます。

 法的に見れば、当事者の責任としては故意の方が、より重いのでしょう。ただ、会計の視点で見ればエラーであれ、故意であれ、出した情報が間違っていて、投資家の意思決定に影響を及ぼしたのなら、重要度は同じです。

――会計的に見ると、東芝問題はどの程度、大きなことだったのでしょう?

 第三者委員会の調査によって、東芝は5年超にわたって約1500億円の利益を水増ししていたことが明るみに出ました。一般人の金銭感覚では、1500億円は十分に巨額だと言える金額です。しかし、会計監査の世界では、重要かそうでないかを見極めるポイントの1つは「ある情報が間違っていた場合、正しい情報を知っていたとしたら、情報の利用者(投資家など)は違う意思決定をしただろうか?」ということです。今回で言えば、5年超で1500億円、つまり年平均で300億円程度の利益水増しが分かったわけですが、東芝は連結売上高が6兆円を超える大企業です。この金額自体は、投資家の意思決定を大きく揺るがすような規模ではないと言えます。

 ただし、後で詳しくお話ししますが、この第三者委員会の報告書は、東芝のP/L(損益計算書)を中心に議論をしていて、B/S(貸借対照表)には、ほとんど触れていない。それでは東芝の会計の全貌を調べ上げたとはとても言えず、従って問題がすべて明らかになったとは思えません。

 また、こういう不正が複数年にわたって放置されていたという、ガバナンスの問題は非常に大きいですね。第三者委員会の報告書を読んでみると、トップの思いを部下たちが忖度して、不正を踏襲してしまったという経営の体質が垣間見えます。以心伝心、阿吽の呼吸というやつですね。

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