ノキアの子会社で地図事業を手掛ける独ヒアは、売上高9億7000万ユーロ(約1300億円。2014年)の成長事業だ

 フィンランドの通信大手ノキアの地図事業をめぐる買収合戦が、ついに決着する見通しとなった。

 7月21日、欧米各メディアは、独自動車大手のアウディ、BMW、ダイムラーの3社連合がノキアの地図事業「HERE(ヒア)」を買収することで大筋合意に達したと一斉に報じた。買収額は約27億ユーロ(約3700億円)で、近く最終合意に至る予定だ。

 ヒアをめぐっては、ノキアが今年4月に仏通信大手アルカテル・ルーセントとの買収合意に伴い、通信インフラ事業に経営資源を集中投下すると発表したため、地図事業の売却話が浮上。以降、配車サービスを手掛ける米ウーバーや、中国の検索エンジン最大手バイドゥ(百度)などが買収に名乗りを上げていると報じられてきた。

 これに対し、独自動車メーカー3社がタッグを組んでまで交渉に乗り出した背景には、ヒアがカーナビ向け世界地図で事実上の世界標準(デファクトスタンダード)になりつつあったことがある。北米や欧州では標準搭載カーナビ向けの地図情報で8割のシェアを占めているのがヒアなのだ。

 特に成長領域である自動運転の実用化において、コア技術の一つとされる地図データが、米IT企業や中国勢に奪われることだけは阻止したかったのだろう。