昨年度の大幅かつ急速な株価下落に直面して、多くの機関投資家が、資産配分をどのようにコントロールすべきか悩んだようだ。

 たとえば『年金情報』誌を読むと、年金基金では、「リバランス」をやるかやらないかで悩んだり、運用委託先に対してロスカット・ルールをつくったり、あるいはオプションなどを使って損失を限定する運用を検討したり、いくつかの対策を検討しているようだ。

 補足すると、リバランスとは「バランスを取り直す」ことだが、たとえば株式の組み入れ率を30%としているときに、株価だけが2割下がると、組み入れ率はざっと25%程度になる(24%÷94%)ので、これを再び30%に近づける操作を指す。計画からの一定の乖離があったときにリバランスを実行すると結果がよいというデータがしばしば示されることもあり、ある程度機械的にリバランスを行なうことをルール化している基金が多数ある。オプションなどデリバティブを使ったリスクヘッジは、かつて「ポートフォリオ・インシュランス」と呼んでいたものの焼き直しだ。

 率直にいうと、これらの対策はいずれも小手先の対応であって、こうしたことを考える以前に、前提条件となっている運用計画全体のあり方を見直す必要がある。

 年金基金の運用は、おおむね5年程度のサイクルで策定される「長期基本ポートフォリオ」をベースとして、これを1年単位で小幅に修正するようなかたちで計画・実行される。年金は長期的な資金の運用だから、運用自体もゆったりしたものでいいはずだ、という先入観が多分にあるし、運用の計画や実績を加入者や母体企業に開示して合意形成しなければならないという実務上の要請もあって、このようなスタイルになる。