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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

天津市の没落を象徴する、爆発事故での呆れた対応

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第259回】 2015年8月21日
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天津市で12日に起きた爆発事故では、多数の犠牲者はもちろんのこと、大量の化学物質の処理が大きな課題だ。
写真:新華社/アフロ

 中国出張に行ってきた。上海の虹橋空港に降りたら、出迎えに来た浙江省の地方政府の関係者に、すぐに車に乗せられ、寧波市の管轄下にある象山県に行った。その日の深夜11時半頃、遠く離れた天津市浜海新区で大規模爆発事故が起きた。

 戦術核ミサイルの投下に相当するその爆発は17日の時点で、死者が114人、消防隊員64人を含む行方不明者が70人、という重大な事故を招いた。

 問題は爆発事故だけではなく、なぜ住宅区の近くに危険な化学物資が保管される倉庫を設けたのか、その許認可をめぐる不思議さ、天津市政府の度を過ぎた幼稚かつ乱暴な対応、倉庫を運営する会社の不可解さ、住民の知る権利に対する酷すぎる侵害などなど、多岐に広がっていく。

 以上の問題のどれも、真相が究明されるまで追及すべきだが、天津という町がここまで遅れを取ってしまったのかをあらためて認識させられた。

天津はかつて上海に次ぐ
屈指の商工業都市だった

 天津は長い間、中国にとっては非常に重要な都市だった。中国語では、「天子」という言葉が皇帝を指す。「津」は渡し場、港という意味だ。したがって、天津とは、天子が通った渡し場となる。明王朝の1400年に天津と名を定めてから、この地名は今日にまで至っている。これまで河北省の省都になったり、直轄市または河北省の省轄市に変更されたりしてきた。1967に再び直轄市となり現在に至る。

 重慶が直轄市になる1997年まで、中国には直轄市が3つしかなかった。北京、天津と上海だ。天津は中国北部を代表する最大の港湾都市として、近代に入ると最も早く諸外国に開かれ、中国北部の開放の最前列となり、中国の富国強兵、近代化を目指した洋務運動の中心地となった。

 天津の推し進めた、鉄道、電信、電話、郵便、採鉱、近代教育、司法などの近代化的整備は全国の先駆けとなり、上海に次ぐ第2の商工業都市となり、北方最大の金融・商業・貿易の中心にまで上り詰めた。たとえば、往時は100を超える国内外の銀行が参入し、全国総資本の15%を占めるほど、北方最大の金融都市としてその存在を誇った。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


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地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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