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世界不況後のリーダーは国から個人へ?
大富豪マネーが社会投資に流れ込む是非

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第119回】 2010年3月30日
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 最近、米マイクロソフトの創設者であるビル・ゲイツ氏の個人経営企業が、日本の東芝と組んで、温暖化対策を目的とする数千億円規模の次世代原発プロジェクトに着手することが報道された。

 また、米アマゾンのジェフ・ベゾスCEOも、多額の私財を投入して宇宙開発に投資するという。IT事業で多額の財を成した“長者”たちが、エネルギーなどに関わる「次世代イノベーション」の担い手に名乗りを上げるケースが目に付くようになっている。

 こうした傾向の背景には、早い時期にIT事業に目をつけた経営者たちのなかに、ケタ違いの私財を手にした人たちが生まれたことに加えて、彼らにとって、多額の私財を投入する価値のある潮流が顕在化していることがある。

 その潮流の1つが、新しいエネルギー開発や宇宙開発事業などのだろう。彼らは、そうした分野に「新しい可能性」があることを嗅ぎ取っているのだ。

 彼らが社会の新しい可能性に私財を投入する姿は、多くの人たちに希望を与えることが考えられる。事業で際立った成功を収めた者が、次の潮流にエネルギーを注ぐ姿勢は、一般庶民にとってもパイオニア精神を実際に見ることができるチャンスである。

 また、私財を投入している限り、仮に事業で損失が発生しても、それが公的機関や一般の人々に及ぶことはない。こういったトレンドは、社会全体にとって大きなメリットだ。

 ただし、問題が出る可能性もある。私財を投入する限り、その事業が成功すれば、主な出資者の事業に対する影響が大きくなることが避けられないからだ。

 仮に、ビル・ゲイツ氏のプロジェクトが成功すると、彼の個人的な影響力は飛躍的に大きくなるだろう。その影響力が過度になってしまうと、社会全体のメリットと相反することも懸念される。

 今後、個人と社会の利益に関して、「一定のバランス」を保つ仕組みが必要になるだろう。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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