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闘志を表さないクールなプロ選手たちに、ファンは怒っている

相沢光一 [スポーツライター]
【第97回】 2010年3月30日
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 今季、横浜ベイスターズに復帰した島田誠ヘッドコーチが、開幕に当たって選手に珍指令を出した。「凡退したらベンチ裏にある物を破壊してもいい」と言ったのだ。本拠地・横浜スタジアムのベンチ裏にはサンドバッグも釣り下げられたという。好結果が出せなかった時、溜まった鬱憤を殴って晴らすためである。

 こんな方針を打ち出したのは次のような理由からだ。「横浜の選手はおとなし過ぎる。負けても悔しさが伝わってこない。もっと闘志を前面に出せ」。試合中、選手は闘争心をむき出しにして戦ってほしいという思いが島田ヘッドコーチにはあった。そのように選手を変えるきっかけとして、ベンチ裏での破壊許可を出したというわけだ。

選手と感情を共有できない
ファンのもどかしさ

 筆者も横浜の選手には同様のことを感じていた。横浜はここのところ無惨な成績が続いている。昨年は51勝93敗・借金42でダントツの最下位。首位巨人とは42・5ゲームもの大差をつけられた。一昨年も48勝94敗2分、借金46で最下位に終わった。

 毎試合のように投手は打たれ、打線はチャンスで打てないというシーンが続いた。打ち込まれた投手はさすがに肩を落とし、うつむいてベンチに下がる。だが、打者の方は凡退しても悔しさを表すこともなく、無表情でベンチに戻っていくケースが多かった。

 もちろん一球一打に生活がかかっているわけで選手は必死でプレーしているはずだ。最下位に低迷するふがいなさも痛いほど感じていただろうし、チャンスで凡退した時ははらわたが煮えくりかえる思いだろう。だが、そうした感情が見る側に伝わってこない。クールなのだ。

 そんな選手の姿を見るたびに、よくファンは黙っているなと思ったものだ。ファンの多くは起伏の少ない生活を送っているはずである。毎日同じような仕事をし、喜怒哀楽を露わにする機会もあまりない。そうした物足りなさを埋めるために球場に足を運び入場料を払って好きなチームや選手を応援する。選手に感情移入し歓声を上げ、日常にはない喜びや感動を味わいにくるわけだ。

 ファンが第一に求めるのはチームの勝利だろう。だが、負けることだってある。そんな時も選手が悔しさを露わにしてくれればまだいい。感情を共有できれば、なんとなく納得できるものだ。ところが選手は劣勢でも淡々とプレーをしている(ように見える)。

 日常では味わえないドラマを求めて来ているのに、見せられるのは日常と同様の冷めた風景(たまに勝つ時は別だが)。これでは料金を払って見にくる意味がない。こんなシーンを2シーズンも見続けたベイスターズファンはかなりのフラストレーションを溜めたはずだ。

 もっとも、これは横浜に限ったことではない。選手は殊勲打を打った時のガッツポーズなどは積極的にするから、強いチームのファンは選手と喜びを共有する回数も多かっただろうが、総じて最近の選手は感情表現が上手くない。

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相沢光一 [スポーツライター]

1956年埼玉県生まれ。野球、サッカーはもとより、マスコミに取り上げられる機会が少ないスポーツも地道に取材。そのためオリンピックイヤーは忙しくなる。著書にはアメリカンフットボールのチーム作りを描いた『勝利者』などがある。高校スポーツの競技別・県別ランキングをデータベース化したホームページも運営。 「高校スポーツウルトラランキング」


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