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ヒット商品開発の舞台裏

芸人も真っ青!奇抜な挑戦で社員を引っ張る
はるやま社長の経営哲学

夏目幸明 [ジャーナリスト]
【第9回】 2015年8月27日
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「社長!!ムリムリ」を覆す
英国王室御用達ブランドにも“突撃”

 はるやまの「アイシャツ」の特徴は、伸縮性に優れ、通気性も抜群なこと。実は筆者も愛用しており、体が自由に動かせるからか、着たまま寝ても心地よく肩が凝りにくい。この商品、2008年の発売後、毎年180%程度の伸びを見せ、15年には販売数100万枚に到達する大ヒットを記録している。この他、ジャージ感覚で着られる「ジャージスーツ」など、はるやまの店には、よそには売っていない商品が数多く揃う。

 「弊社はアンテナ1本で勝負していませんから」と話すのは、社長の治山正史氏。「よく『情報のアンテナを立てる』と言いますが、社内で私1人がアンテナを立てていても、商品開発に活かせる様々な情報は集まってきません。社内の全員が感度を高くし、どんなことにチャレンジすべきかを、知っているから、たくさんの情報が集まってくるんです」

 ここまでは経営の教科書通りだ。だが治山氏はここからが違った。「まずは、自分自身がお手本を見せることが大切です。面白いものをつくろう!だけでは社員は動きません。『百聞は一見にしかず』と言う通り、やってみせるんです。ボクなんか、芸人ですよ(笑)」。

ジャージスーツを開発した次には、富士山登頂やフルマラソンに挑戦して品質を自ら確かめる。芸人も顔負けの社長のチャレンジを目の当たりにするからこそ、社員たちも動く

 治山社長の口癖は「いいねえ!」。なんにでも前向きで、例えば広報を考え、富士山頂でジャージスーツ姿の写真を撮影した。今年は耐久度を自らチェックするため、ジャージスーツ着用でフルマラソンに挑戦する予定だ。

 また、ある時は「ヨーロッパの超一流生地メーカーと提携しようや!」と話して、英国王室御用達のブランドを訪ねた。日本国内では高級百貨店くらいしか取引がないから、周囲にも「難しい」と言われたが、商社の人とスタッフを引き連れ、セビルロウ(イギリス・ロンドンのスーツ発祥の地。『背広』の語源にもなった)を訪ねると、意外と簡単にOKがもらえた。

 「フィレンツェの高級ブランドを訪ねた時は楽しかったなぁ!紡績工場は巨大なお城みたいで、敷地内の豪邸を指し、イタリア人の案内人に『オーナーの家はすごいですねぇ』と言うと笑われてしまいました。聞けば『アホ言うな。あれは使用人の家や』とかで(笑)」(治山社長)

 技術力を試してみたいと思い立ち、ギネスブックの世界記録認定も受けた。「『最も小さい男性用テーラーメイドのスーツ』の製作に挑戦したんです。ジャケットが19.7cm、パンツが35.5cm。簡単じゃないか、と思われるかもしれませんが、そうでもないんです。ポケットからジッパーまで小さくなるから、縫製も、ほら昔、お米に細いペンで文字を書くCMがあったでしょ? あのように非常な精度が求められるんです。限界はどこにあるかといえば、たいてい、自分の頭の中にあるんですよ。限界とは、考え方ひとつで無くなるものなんです。それを社員に見せたかった」。

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夏目幸明[ジャーナリスト]

1972年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店に入社。その後、雑誌記者に。小学館「DIME」の『ヒット商品開発秘話 UN.DON.COM』や講談社「週刊現代」の『社長の風景』などを連載中。著書に『大停電(ブラックアウト)を回避せよ!』(PHP研究所)などがある。


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よい商品やサービスが必ずしも売れるわけではなく、ヒットするには何かの仕掛けが必ずある。ユニークな技術から、消費者の心をつかむマーケティングまで、ヒット商品・サービスの秘密に迫る。

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