前回の私立中学・高等学校におけるクラウドを活用事例を紹介したが、公立学校でも独自のアプローチでICT環境整備に挑む学校や自治体が登場している。これらの動きを前後編で紹介したい。前編の今回は、主に公立学校を取り巻く国などの大きな動きを解説する。

2020年度までに「小・中学生1人に1台」の
教育用コンピュータを

 最近、小中学生に1人1台のタブレットを2020年度までに配備するという話を聞くことがあるのではないだろうか。

 この方向性は、2010年5月11日に文部科学省のIT戦略本部(当時の名称)が決定した「新たな情報通信技術戦略(教育関連)」が発端だ。重点施策として「情報通信技術を活用して、i)子ども同士が教え合い学び合うなど、双方向でわかりやすい授業の実現、ii) 教職員の負担の軽減、iii)児童生徒の情報活用能力の向上が図られるよう、21世紀にふさわしい学校教育を実現できる環境を整える。」と宣言されており、その具体策として「児童生徒1人1台の各種情報端末」という文言が登場する。

「1人1台の情報端末」という構想が最初に中央省庁の資料として登場した”新たな情報通信戦略(教育関連)”の資料抜粋。原本はこちらを参照
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 これを受けてデジタル教科書・教材、カリキュラム錬成、指導者育成、学習指導要領の改訂準備などを検討するための組織や会議体が複数発足した。並行して、文部科学省、総務省、経済産業省等が予算を確保し、全国各地の「実証実験校」にICT機器を配備し、実際の教育現場での教育上の効果や課題の検証が行われ始めたのだ。

 ちなみに2010年はiPadが発売された年でもある。翌2011年は薄型軽量化しカメラが付いたiPad2や各種Androidタブレットが発売された「タブレット元年」だ。また、2010年には福岡県の学校法人 博多学園 博多高等学校、2011年には千葉県の袖ヶ浦高校のように、実証実験ではなく学校として独自にタブレットを導入するケースも出てくる。