クラウドを授業や学習のツールに取り入れた、品川女子学院、聖光学院の生徒たち

本連載では、近年急速に進みつつある教育分野のIT化の現状について、特に小学生~高校生向け教育の周辺動向をなるべく平易に、正確に伝えていきたい。急速に動き出した私立学校のIT化に加え、公立学校(市町村・都道府県の教育委員会)で起きているITを活用した教育の“拡張”への取り組みを取材し、課題と解決策を紐解いていきたい。

 初回は、“クラウドと教育”について取り上げる。スマートフォンの普及に伴い、私たちは日常的にクラウドを利用するようになっている。子供たちもLINEやファイル共有クラウドが便利なので、当たり前のように使う。一方で、通っている学校の大半はIT機器の利用はおろか、持込みや校内での利用を禁止しているのが現状だ。だが、クラウドを積極的に生徒に解放する学校も出てきている。今回は、代表的なクラウドアプリケーションの1つである「Evernote(エバーノート)」の導入事例から、教育現場の課題と解決策を考えていきたい。

キーワードは
「アクティブラーニング」

 導入事例を紹介する前に、国が進めている教育改革の動向に触れておきたい。学校教育は文科省を中心とする大学入試改革と連動する形で大きく動きつつあり、その中でも「アクティブラーニング」というキーワードが頻出する。

 アクティブラーニングとは「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法の総称」(平成24年8月中教審答申)とされる。教員が40人程度の生徒児童に向かって一斉に講義を行う方式だけではなく、「調べ学習」やグループワークなどを通じ、生徒児童が主体性を持って学ぶスタイルも取り入れるべきである、という考え方だ。例えば、生徒自身が世の中に存在する課題を発見し、解決策を考え、提案するという課題解決型学習はその典型例だ。

 こうした学び方は、以前から多くの学校で部分的に取り入れてはいるが、教員の指導方法の質的転換が必要なことや、時間的な制約から導入範囲の拡大を行うことが難しいのが実情だ。

 だが、ITを教育に使うことで、そのハードルが下がる可能性が多く指摘されている。インターネットで最新情報を収集し、それをチームで瞬時に共有することは課題の発見、原因分析、対策立案など様々な面で効果的だからだ。そうした「ツール」としてITやクラウドやタブレット端末を導入する学校も増えてきている。

 今回はその事例として、品川女子学院と聖光学院の2校を紹介する。