人生の年輪のように広がる
関係性の弱い人脈は意外と使える

それほど強い結びつきではない人との関係性があなたのキャリアに大きな影響をもたらしてくれる可能性がある

前回、「弱い紐帯(結びつき)」の人脈が転職やキャリア形成においていかに大切かという話をした。数の問題が大きいのだ。「強い紐帯」の人間はそれほど数が大きくない。なぜならば、常に今この瞬間の結びつきが強い関係が、強い紐帯だからだ。

 しかし、弱い紐帯は人生の年輪のように増えていく。かつて強い紐帯だった人たちが、弱い紐帯となって少し遠くへ立ち去るからだ。

 人生において、仕事において、自分の可能性を広げてステップを踏んでいけば、前のステップの関係は自ずと弱い紐帯になっていく。途切れてしまう紐もあるだろう、あえて切って関係を断った紐もあるだろう。しかし、相同性のある、言語体系の似ている、しかし違う分野に生きる良質の紐帯もまた、増えていくはずだ。

 私はどちらかというと、節目、節目で過去を振り捨てるように生きてきた。意図的に過去を捨てて、今の紐帯を大事にするという生き方をしてきた。しかし、そろそろそういった生き方を変える時期かなとも思っている。

 もちろん、人生の黄昏を意識して、昔話をするために弱い紐帯を大事にしたいわけではない。

 今の最先端の自分を、偽ることなく相同性のある昔の仲間にぶつけてみる。それでもしかするとおもしろい化学反応が起こるかもしれない。それを試してみたいのだ。言うなれば弱い紐帯のリバイタリゼーション(再生)への挑戦だ。

 弱い紐帯の関係になって以降、私とは別の道を歩き、私の知らない分野の最前線にいる人間が、相同性があって自分と“同じ言葉を話せる”人間であるとすると、かなりおもしろい再会になるに違いない。

 今回も転職のための有益な情報源という脈絡で話をしているのだが、異なる道を歩んでいる言葉の通じる人間からもたらされる「意外なチャンス」には期待できる。