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三谷流構造的やわらか発想法

本来は「男心と秋の空」だった!?
~秋のことわざを探究する

三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]
【第120講】 2015年9月3日
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復習:「天高く 馬肥ゆる秋」の本質は?

 やっと9月。

 秋のことわざといえばなんといっても「天高く 馬肥ゆる秋」ですよね。その意味は「食べ過ぎ注意」……ではありません。第71講『雲って何だろう~身近な「なぜ」を探究する[1]』で詳しく解説したとおり、気象的錯覚と軍事的警句の複合でした。

 まず「馬肥ゆる秋」は軍事的警句でした。

 「秋になると肥えた馬や収穫物を狙って、北方から匈奴が攻めてくるぞ!」という。中国 前漢(*1)の時代、つまり2100年前の言葉(*2)です。

 そして、「天高く」は一種の錯覚でした。

 秋は必ずしも晴天率は高くありません。でも、巻雲(すじ雲)や巻積雲(うろこ雲、いわし雲、さば雲)、高積雲(ひつじ雲)(*3)など高層(5000m以上)の雲が発達します。それが「空が高い」という錯覚を生むのです。空の高さは、空が決めるのではなく、雲が決めていたのです。

 さて今回は他の4つの「秋のことわざ・慣用句」を吟味してみましょう。

暑さ寒さも彼岸まで
秋の日はつるべ落とし
女心と秋の空
一葉知秋

なぜ「暑さ寒さも彼岸まで」なのか?

 ここでの「彼岸」は、春分の日と秋分の日ということにします(*4)。2015年だと3月21日と9月23日がそれに当たります。昼夜の時間がほぼ同じ日です。

 暑さ寒さも彼岸まで、の意味は「彼岸までには過ごしやすい気温になる」「残暑は治まり、余寒は和らぐ」というので、確かめてみましょう。

 東京での過去30年間の「日別気温」で、見てみます。

[出所]気象庁データより三谷作成

 春彼岸の頃、われわれは「暖かく過ごしやすくなった」と感じます。でもそれは最高気温がようやく14℃に達したくらいで、最低気温は5℃に過ぎません。

 秋彼岸の頃、われわれは「もう涼しくなって暑くはない」と感じます。最高気温が25℃で春より10℃以上も高く、最低気温は18℃で春の最高気温より高いというのに。

 真の「体感」温度は(気温や湿度・風速だけでなく)、「それまでの慣れ」からも来るということなのでしょう。体感とは面白いものです。

*1 劉邦が項羽との戦いに勝って、BC206年に建国した。7代武帝のとき全盛、匈奴を打倒した。8年に滅ぶが光武帝によって25年、再興。これを後漢と呼ぶ。
*2 詩にしたのは、初唐の詩人 杜 審言(と しんげん、645~708)。杜甫の祖父。
*3 高積雲は2000~7000メートル。
*4 実際には春分の日、秋分の日を中日とした前後7日間。

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三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]

1964年大阪生まれ、福井育ち。小1のとき読書と読みかじりを人に教える快感に目覚め、駿台予備校では教えることの技術に衝撃を受ける。東京大学 理学部物理学科卒業後19年半、BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEADでMBA修了。
2006年から教育の世界に転じ、社会人教育と同時に、子どもたち・親たち・教員向けの授業や講演に全国を飛び回る。「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマに毎年8000人以上と接している。現在K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 主任教授(MBAプログラム)の他に、早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院、女子栄養大学で客員教授、放課後NPO アフタースクール及びNPO法人 3keys 理事を務める。永平寺ふるさと大使。
著書多数。『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)は啓文堂書店2012ビジネス書大賞、『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位、ビジネス書大賞2014大賞、『ビジネスモデル全史』(同)はHBRベスト経営書2014第1位となった。
HPは www.mitani3.com

 

 


三谷流構造的やわらか発想法

発想法ってなんのために存在するのでしょう? ヒトと違うアイデアや答えを出すためです。統計的に有意な戦略なんて、定義により無価値ですし、統計的に正しい発想法なんてあるわけがありません。発想に「普遍性」や「高確率」を求めるなんてそもそも矛盾しているのです。発想法も、然り。これまでと違うものを生み出すには、新しい発想法がいま求められているのです。

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