テスラの家庭用蓄電池「価格破壊」の盲点ドイツの展示会では実物大のサンプルが出展されたが、日本の展示会ではEVだけだった Photo:©Solar Promotion GmbH

「革命的だ!」。突如、蓄電池市場に現れた黒船、米電気自動車(EV)メーカーのテスラモーターズの家庭用蓄電池「パワーウォール」(PW)に業界関係者たちは当初、拍手喝采した。破格的な安値で勝負してきたからだ。

 日本メーカーのそれは、1日の日中に使う電力を賄えるとされる容量5キロワット時なら100万円以上で、1キロワット時当たりおよそ20万円の計算だ。対してPWは7キロワット時で36万円。1キロワット時当たりわずか約5万円だ。

 テスラのイーロン・マスクCEOは5月にPWを発表。直後のドイツの太陽光関連展示会「インターソーラー・ヨーロッパ」では、実物大サンプルがお披露目された。7月の日本の展示会「PVJapan2015」でも披露が期待されたが、残念ながらEVだけ。担当者によれば、「日本では2016年以降の出荷予定だが、価格など詳細は未定」。日本市場への正式発表はまだ先となっている。

 それにしてもなぜこんなに安いのか。太陽光発電製品を扱う関係者の間では、「EV用に大量仕入れしたパナソニック製リチウムイオン電池のおかげ」との声が一般的。一方で、「シェア拡大のためのフラッグシップ製品で採算性を度外視」との見方もある。「設備投資の資金を金融機関や投資家から引き出すアドバルーン」だというのだ。

 もっとも、価格には、電力を直流から交流に変換するインバーターが含まれていない。これを含めると70万~80万円程度になるとみられる。EVとの併用ならカーポートへの設置が便利だが、「住宅に配線するなら電気工事費がさらにかさむ」(業界関係者)という。