足元で資源価格が高騰している。一時落ち着きを見せていた原油価格は、1バーレル=83ドル台(4月1日現在のニューヨーク市場のWTI価格)になっている。
原油ばかりではない。わが国の鉄鋼メーカーが、ブラジルの大手資源企業であるバーレから輸入する鉄鋼製の価格は9割の値上げで決着し、オーストラリアから輸入する原料炭の価格も、昨年比5割以上の値上げが決まった。その他、非鉄金属なども軒並み上昇傾向を鮮明化させている。
こうした資源価格高騰の背景には、新興国を中心とした需要の増加がある。今まで世界経済を牽引してきた欧米諸国が、依然バブルの後始末に苦しんでいる一方、中国やインドを中心とした主要新興国は、すでに景気回復を越えて「過熱状態」に足を踏み入れている。
多くの需要を抱える新興国の経済成長に伴い、エネルギーや一部の金属など、資源に対する需要は飛躍的に拡大している。専門家の一部からは、「すでに資源争奪戦が始まっている」との指摘もあるほどだ。資源価格が上昇傾向を辿ることは、避けられない。今回は、資源価格上昇が企業に与える影響を考えてみたい。
問題は、上昇する資源価格が企業が使う原材料の価格を押上げることだ。企業が原材料の上昇分を価格に転嫁できないと、収益に下押し圧力がかかることになる。それは、ようやく回復し始めたわが国をはじめとする先進諸国の景気回復の腰を、折ってしまうことも懸念される。
特に、デフレによる「安売り合戦」から脱却できないわが国では、原材料の高騰を価格転嫁できずに破綻を余儀なくされる企業が出ることも考えられる。今後、“生き残れる企業”と“生き残れない企業”との格差が一段と鮮明化することが予想される。
不況下で始まった資源高騰は
企業収益を大きく圧迫する
鉄鋼石、原料炭、原油、非鉄金属などの価格上昇は、企業にとって製造コストの上昇圧力になることは避けられない。本来、製造コストが上がると、企業はその分を製品価格に転嫁して、収益状況の悪化を防ぐことになる。
ところが、わが国をはじめ、先進主要国の景気はいまだ製品価格の値上げを容認できるほど回復していない。製品価格を下げることができないと、どうしても企業の収益は圧迫されることになる。最悪のケースでは、ようやく回復し始めた景気の趨勢を崩してしまうことさえ懸念される。